Please say to me

初対面だった。
私と一之瀬があったキッカケは雷門中に一之瀬が向かう時のこと、だったと思う。

「あの、すみません!」

綺麗な声が響いて、学校へ向かおうとしていた私は振り返る。見るからに好青年だと思わせる少年…つまり一之瀬がいた。

うわ、すごく優しそうな雰囲気の子だなぁ。
それが私の思った第一印象で、この先すぐに後悔することになるとは知らず。

「雷門中へ行きたいんですけれど…道を教えてもらえませんか?」

「雷門に?私も今からちょうど行くところ、なんですけれど…」

「あ、それならついていってもいいですか?」

「もちろん。その方がいいと思いますし」

敬語で話す一之瀬が同じくらいの年に見えて、敬語じゃなくていいと言えば、それから彼の自己紹介が始まる。私もその流れに沿って名乗った。
どうやら同い年らしく、秋ちゃんと土門に会いに行くのだとかを聞いた。
サッカーをやっているとか、いろいろあってしばらく姿を見せてなかったとか。
他愛もない話をするのがやけに心地よくて、気付けば校門の前へと着いている。

「案内してくれてありがとう、名前」

突然の名前呼びに驚いたのと共に、私は頬に触れた感触に悲鳴をあげそうになった。

「な、何して…っ!!」

言葉よりも先に手が出る。無意識に振り回したバッグ。一之瀬は軽々とそれを避けてにっこりと笑みを浮かべながら私の耳元で囁いた。

「君っておもしろいね…気に入ったかも」

その言葉を噛み締めて意味を理解した頃には一之瀬の姿はない。怒りをぶつけるところがなくて苛立ちを抑えきれない私は頬を押さえてへたり込むのだ。

「な…何が起こったの…」

前言撤回。第一印象、あいつは危険因子だ。

―――
「君っておもしろいね…気に入ったかも」と言われたい


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