Please say to me |
※5年後くらいの話 先輩も、私も、お酒を飲めるような年齢になる一歩手前になった。 何だかんだで中学からの付き合いで、高校は別になってしまったけれどそれでも大丈夫だった。 いつも気にかけてくれて、優しくて。理想の相手というのはこの人の事だと思った。 今日は私が高校を卒業した日。一足先に大学へと進んだ先輩のおかげで何とか試験を切り抜ける事が出来た。 「卒業おめでとう、名前」 「ありがとうございます。無事に大学にも通えますね、先輩のおかげです」 卒業式の終わった午後。そんな会話をしながら一人暮らしを始めた彼の家にお邪魔している。 夜は最後の打ち上げをやるらしく、限られた時間しかこうしている事が出来ないけれど私はそれでも幸せだ。 「なぁ、そろそろ先輩っていうのやめてくれないか?名前で呼んで欲しい」 「あ…そう、ですね。なんだか癖で。…幸次郎、さん?」 「なんで疑問形になるんだ」 「違和感がありまして」 「…いつご両親に挨拶に行けば良いか?」 「っ、へ?」 自然な流れというか、淡々とというか。さらりと吐き出されたその言葉に私は腑抜けた声しか発せず。 そこまで、考えていたとは思っていなかった私は無言で幸次郎さんの手を握った。 ――― 源田に「…いつご両親に挨拶に行けば良いか?」と言われたい |