Please say to me |
フィディオがすごくドス黒い笑みを浮かべていたように感じる。 「ちょっといいかな?」と女子の会話に混ざっていた私の手を引いた。 助けを乞うもそれは無意味。フィディオに釘づけになっている彼女達に私の声は届かなかったようだ。 「な、なんの用なの、フィディオ」 「いや、ちょっと聞きたい事があって」 「目が笑ってないんだけど、え、あ、怒ってる?」 じりじりと詰め寄られた私は一歩一歩後ろへ後退していく。 「あいつと俺、どっちなんだ」そう呟いたフィディオに私は目を丸くするしかなかった。 あいつ、とは恐らくあれか、委員会で一緒になった男子。 広報を作るのを活動としているから放課後、二人きりで仕事をする事も少なくない。 彼は実にフレンドリーで活発な子だから話しやすいと言えば話しやすい。 「なんでそんな急に……委員会の仕事やってるだけ、だよ」 「あいつがどんな目で名前を見てるか、分かってる?」 ゴツンと背中に冷たい感触。壁際まで追い込まれてしまったようだ。 どうしよう。とりあえずこの男から逃げなくてはならない。 まずおかしいよね。私は別にフィディオと付き合ってるわけでもなんでもない。 家が近所なだけだ、幼馴染なだけだ、親が仲いいだけだ。 逃げようと決めた私はすぐに腕を振り払って走ろうとする。 その意志も虚しく、顔の横にはフィディオの手。完全に追い込まれている。 「名前が俺の事をどう思ってるかは分からないけど、」いつもの明るめな声がそう言う。 「逃がさない」 ああもう、終わった。いろんな意味で。 ――― 「あいつと俺、どっちなんだ」「逃がさない」と言われたい |