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落として割れた、フラスコの破片が散らばった。 理科室に片付けに来た私が手にしていたそれが砕ける原因が目の前にある。 切れた指先から少しだけ血が滲んでいるけど大した事もなかった。 そんな事より、だ。目の前に広がる光景は、何。 女子生徒の影と、男子生徒の影が重なるのを見た。 それがもし、カップルだとしたら私は邪魔者であるわけですぐにこの場を立ち去っただろう。 その男子生徒の影が、私の思い人でなければ。 「……っ、あ、ごめ、んなさ」 上ずる声は最後まで出し切る事さえ叶わない。歪んだ視界に邪魔をされる。 そんなことないって、源田君がそんなことするわけない、って。 思ってるのに、私はそれでも信用することができなくて。 砕けたフラスコを鷲掴みにすれば皮膚がぷつりと切れた。それをプラスチックの箱に入れて立ち去る。 何か理由がある。彼は優しいから、だから何か理由がある。女の子に強要されたとか、そんな理由があるはず。 真っ赤になってる左手を捕えられた。馴染み深い手だった。 振り返ってしまえば私の精神が崩れてしまうと思って私は顔を背けた。 「ごめん、なさい、…私、しばらく源田君の顔、見れない」 「すまない、名前、俺は…」 「何も、言わないで」 手を振り払う。彼の力とは思えないほど弱々しくて簡単に振り解けてしまった。 「すれ違うくらいならあんなことしなければよかった」 そう呟いた彼の言葉は確かに耳に届いたけれど、無視しなくちゃ私の心が折れそうだった。 どうやら、私の憶測は当たっていたらしい。(それでも彼と顔を合わせたら死にたくなった) ――― 「すれ違うくらいならあんなことしなければよかった」と言われたい |