Please say to me

「綱海のバーカ!もう勝手にすれば!」

知らない!私はそう吐き捨てて来た道を戻る。
事の発端は通知表を見て落胆する綱海の言葉からだった。
『このままじゃ進学危ういって言われちまった…』と。
確かにサッカーで世界レベルに行ったとしても最低限の勉学ができなくては駄目だ。
つまり綱海は基礎ができてない。それを短期間で直し上げれば何とかなるという話になった。
それから私と音村が付きっきりの講師として勉強会を始めたのだ。
そうしたら何だアイツ。ここ三日間の頑張りは素直に認めよう。

「今日は波がすげーよさそうだから行ってくるわ!」

ちなみに音村は結構綱海の家から離れている。私の家も離れている。
わざわざクソ暑いなか来てるのに何だ、それ。さすがの私もキレる。そして冒頭に戻るわけだ。
せっかくこっちが勉強やろうって提案してあげたのに。音村にも協力してもらってんだから少しは考えなさいよ。

「綱海のバカ、アホ!もう知らない!」

できるならば彼と同じ高校へ進みたい。サッカーでも活躍できる高校は意外と少ないのだ。それも結構ハイレベル。綱海はそこがいいとか言っていた。
だから一緒に進学できるようにこうしているのに。

「空回りしてばっか……」

声が聞こえる。振り返るところにあるシルエット。サーフボードを持ったその姿。
私の苛立ちは治まらない。

「綱海なんか、大嫌い!!」

言ったな!とムキになった声が返ってくる。私はまた前を向いた。

「俺はお前なんか大好きだ!」

何大声で言ってんの、あいつ。言葉の意味が噛み合ってない。
羞恥と日差しの暑さで私の体は熱くなっている。私は綱海のところに向かって思い切り走った。

―――
「お前なんか大好きだ!」と言われたい


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