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誕生日、だったのだ。 今テレビのモニターには大好きで仕方のない人が確かに映っていて、私は深く深く溜息をついた。 仕方ないのは分かっている。だって大切な予選。これに勝てば次は世界。そんな私のわがままで押し切るわけにはいかない。 テーブルに置かれた、ユニコーンのみんなからの贈り物のホールケーキに目を向ける。 「終わったらちゃんとパーティーしような」そう言ってくれたユニコーンのみんなだって切羽詰まってたはずなのに私の事を考えてくれていたのだ。 だったら我慢するのよ私、たかが一度、…ディランと誕生日を過ごせなくたって。 付き合い始めて初めての誕生日が今日だったのは残念。やっぱり駄目だ、私は未練がましい。 考えるだけ虚しいのか、私はいつの間にかテレビの前で眠りについた。 「ただいま、名前!」 「ん…おかえり、ディラン」 半分寝ぼけている私に帰ってきてすぐに抱きついたディランの背中をあやすように撫でる。あたりは真っ暗、もう夜なのだと分かった。 ユニコーンのみんなの表情には嬉しさが滲んでいて勝てたんだと分かる。 寝てしまったのが勿体なく思ってしまうのと共に罪悪感が芽生えたのは確かだ。 ディランがいつも以上の元気さを見せて私の手を引いた。私はされるがままに連れ去られる。マークが口を動かして「ごゆっくり」と言ったのが微かに耳に届いた。 「ディラン、何処行くの?」 「この間練習してる時にユーに見せたい場所、見つけたんだ!」 まだミーしか知らない場所だよ、と付け足されて私はぐいぐいと手を引かれる。街とはちょっと離れた木々の中。そこにあるのは一つの大木と、まわりには白い花。 月に照らされてるだけなのにその白はとても映えて、綺麗だ。 「Happy Birthday、名前!一日中祝ってあげられなかったのは残念だけどね」 「……ううん、すごく嬉しい。ディランと二人っきりで祝ってもらえて、嬉しい」 嬉しくて胸がいっぱいになって張り裂けそうなくらい幸せ。心の中に入りきれないそれは嬉し涙になって溢れ出た。 私より背の高いディランが唇で触れる。額に、頬に、首筋に、唇に。 「来年の今日も一緒に来よう。今度は一日中祝ってあげる!」 ――― 「来年の今日も一緒に来よう」と言われたい |