Please say to me

「マルコ、あのね、聞いてもいいかな」

彼のお手製のパスタを頬張りながら私は恐る恐る声を出す。そりゃもう掠れ声になるんじゃないかというくらいの弱々しさ。
エプロンに身を包んでいる少しクセのある赤毛が振り向いて、私を見据えた。
久しぶりの練習のない休日の昼下がり。そういえばこうしてちゃんとマルコを目にするのも久しい。
手には泡の付いたスポンジ。料理も後片付けも全部やってくれているのは彼で申し訳なくなる。
それよりも、だ。私がここまで弱気で聞きたい事というのはこの間、練習の後に話をしていた…女の人の事。嫉妬深いと笑われてしまうだろうか、それとももしかしたら彼女は…なんて確定しない事実に私は不安に駆られていたのだ。

「この間、マルコがその、…女の人と仲良く話してるの見て、それで」
「何、もしかして名前は嫉妬でもしたの?」

それ以上私が言葉を発することはできなくなってしまい、お皿の上に残るパスタをフォークでくるくると巻く。
「心配しなくてもあれはいつも行ってるお店の店員さんだよ」と私の髪をくしゃりと撫でて、彼は笑う。私はマルコの言葉を信じたいと思っているし、それ以上深く追求しようとかは思わない。それって私が信頼してない事になるし、マルコはそんな嘘をつけるほど器用じゃない…と思う。

「……私、やっぱりマルコが大好きだ」

食器を洗う背中に呟くと、がしゃんとお皿が落ちた音がした。割れなかったかな、マルコ怪我しなかったかな。そう思って大丈夫かと声をかけに近付くと、マルコは頬を赤く染めて口をパクパクと動かしていた。

「そんな急に何言い出すかと思ったら、…っ、やっぱり名前には敵わないな」
「つかぬ事を聞くけれど…マルコは、どう思ってるのかな…?」

大きな溜息をついて私の肩に顔を埋めるマルコがぼそりと小さな声で呟く。
それが嬉しくてたまらなくなって。

「…言わせるなよな」
「イタリアの人ってもっとストレートかと思ってた」
「万人がそうとは限らないだろ?」

―――
「…言わせるなよな」と言われたい


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