Please say to me

何かと突っかかってくる彼を私は無視する。
なんの取り柄もない平凡な成績の私に突っかかってくるのかが私には理解できなかった。
ミストレーネ。容姿端麗、成績優秀。バダップには及ばずとも彼は学園内で上位を争うレベルであるわけであり、私など到底及ぶことなどない。
それが何故、私に関わってくるのか。
今日も女の子数人を連れ込んで私の席へとやってきたミストレーネは私の顔を覗き込んできた。
実習訓練の授業の後、大抵の生徒は疲れで苛立っている。私もその部類だ。紙パックのジュースを口にしている最中、ずっとミストレーネの視線が私に注がれていた。

「……何か用でもあるの?」
「あ、やっと口開いてくれた」

心底嬉しそうな笑みを浮かべる彼をスルーして私は次の授業の準備を始める。
休み時間はまだたっぷりと残ってはいるがここでは安心して休憩できない。

「ねぇ、名前。お願いがあるんだけど」
「私なんかより他に適任な子いるんじゃないの」
「ううん、君じゃなきゃダメ」

まさか彼が私なんかにものを頼むとは。
「条件と内容によっては断る」そう釘を刺しておいた。
無駄に整った顔が私の耳元へ近付いて、紡がれる言葉はありえないとしか言いようがなかった。

「俺の彼女になってもらえないかな、」
「…っ!?」

がたんと大きな音を立てて私は身を引く。満面の笑みを浮かべたミストレーネは自分の周りにいる女子にはお構いなしと言うかのように私の髪を掬って追い打ちをかけた。

「拒否権ないから」

机に置いてあったジュースが床に落ちる。
冷静に思考を巡らせてたどり着いた答えを歯を食いしばって静かに呟いた。

「君の考えてる事……本当に理解できないわ」

―――
「拒否権ないから」と言われたい


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