Please say to me

土埃がたくさん舞っているグラウンドに目を向けながら私はひっそりと昇降口で人を待つ。
いつもの日課でもあるこれは夕日で色づいた空と鳴り響くチャイムが合図となっているのだ。
ばたばたと走ってくる人影を見て、私は立ち上がって荷物を持つ。

「ごめん、待った?」
「全然待ってない。だって立向居君の練習風景、見てるから」

今日転んでたけど大丈夫だった、とか。そんな会話を繰り広げて足を踏み出そうとする。
そう言えば戸田先輩が、と立向居君は言いかけて口ごもる。
背後からは私を呼ぶ声。戸田先輩だ。話があるとか、なんとか。

「立向居君、私呼ばれてるみた…」
「…早く一緒に帰ろう!邪魔者が来ないうちに」
「え、」

言い方は悪いけれどと苦笑いする彼は私の荷物を手にとって走り出す。
私は追いかけてきた戸田先輩に一度頭を下げて走り去る立向居君を追いかけた。

「ね、ねぇ、戸田先輩がなんて言ってたの?」
「名前さんをマネージャーにしたいって」
「私は別に構わないんだけど…」
「俺が嫌だから、独り占めできなくなるの」

その言葉に嘘偽りなど欠片もないようで私はただ背中を追った。

―――
「…早く一緒に帰ろう!邪魔者が来ないうちに」と言われたい


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