納得がいかなかった。あれだけの難しいプログラムを解除したのに何も出てくることはなかった。
何か王牙学園の秘密があるものかと期待していたというのに裏切られた感じ。つまらない。

『二学年Aクラス、ナマエ・ミョウジ。至急執行室へ。もう一度繰り返す、ナマエ・ミョウジ、執行室へ』

「…ナマエ!あんた何やったの?」

音楽を聴いていたヘッドホンを取られて状況を飲み込めない私は間抜け面しかできない。

「へ、な、何が?」

「執行室に呼び出しの放送、流れてたよ?」

……執行、室?その言葉に血の気が一気に引いたような気がした。バレた、かもしれない。


足取りがそりゃもう金属みたいに重い。もし退学とかだったらどうしよう。全寮制だから入学したわけであって絶縁関係な両親のとこなんかに帰れるわけない。
そうだよ、私には帰る家がないんだ!

(あぁあああああああ!!もうどうするのさ!!)

私の暗い気分なんて知りもせず、響き渡る黄色い歓声。頭にガンガン響くのが嫌でヘッドホンに手をかけた。

「あ、いたいた!」「ったくお前が目立つせいで進めねぇんだよ!」

前方から私のほうへ向かってくる人影。女子の黄色い声。混ざる音。正体は、

「ミストレーネ・カルス、エスカ・バメル…!?」

「やっと見つけた!ってことで連行、っていうより拉致に等しいのかな?」

「誤解を招くような言い方すんなよ、ミストレ!」

「い、今っ、連行って」

両腕をがしりと掴まれた。途端に女子の悲鳴が上がる。これはミストレーネの所為。囃し立てるような男子の声も耳に届いた。これはエスカの所為。
おい、今三角関係とか言った奴、蹴るぞ。

「ツラ貸せ」「ちょっとお借りするね」

両腕を捉えられた私は何も言葉を発せず、顔を真っ青にして引きずられるしかないのだ。

連れ出される先は何処かも知らず