数ヶ月前、学園内のとある一室では規則を破った生徒がその手で何かを操る。厳重に設定された扉のプログラムを何の罪悪感も感じてはいないかのように、淡々と開いていく。
目指していた扉をくぐり抜ければ、目の前に広がったのは多数のコンピューターと大きなモニターで埋め尽くされた部屋だ。
機械の起動音が響いた。薄暗い部屋には無数のモニターの明かりだけ。
何故電気をつけてやらないんだってよく怒られることもあったけど、私としてはこれが一番集中できる環境。

「……よし」

かちゃりとキーボードが小さな音を立てる。緊張感が全身を駆け巡って、感覚を麻痺させた。
私は今、この学園のトップであるヒビキ提督の目的を暴こうと試みているのだ。


「『オペレーション・サンダーブレイク』…?サッカーの、消滅」

学園の機密事項が全て収められているのがこのモニタールームであり、今使っているコンピューターこそがマスターコンピューター。
この部屋に入るまでがとても厳重な為か、ロックはとても単純なものだった。

(おかしい、うまく乗せられたみたい)

何も起こらないことが逆に気味が悪い。眉間にしわを寄せて考え込むと、あるファイルが目に付いた。
『Vシステム』
そう名付けられたそれは異様な雰囲気を醸し出しているような、そんな感じがしてカーソルを運ぼうとした。
瞬間にモニターに勝手に表れたプログラム。それはまるで解除してみろというように。私はそのプログラムに吸い寄せられるようにキーボードに触れた。
解除プログラムのようだけれど非常に難解。このレベルは試したことがない。

「……面白い」

一呼吸置いて目を閉じる。解除出来たらどうだろう。試す価値はある。私はキーを打ち込み始めた。それが何なのか、正体も分からないのに解いてしまったのは不覚だったなんて、今更思っても遅いわ。

仕掛けられた謎解き