ヒビキ提督から事実を語られた日から、生体兵器であるべき役目を果たそうと思った。本能的にだと思う。戦争が起こるまでは私は治安維持の為の番人として扱われるらしい。
私は本能的に、国の定める基準で判断をし、…命を、奪うようになった。全ては組み込まれたシステムの所為だ。

バダップやミストレやエスカバのところには、もう帰れない。
もしも彼らのそばにいて、彼らが基準を超えてしまうような事があったら。私は間違いなく組み込まれた本能で…殺してしまうだろう。
絶対にそれだけは避けたかった。私のかけがえのない人達を、自分の手にかけるなんてできない。

私はずっと研究施設の中で生活をしている。真っ白で変わりない、殺風景な施設内。一週間しか経ってないのに酷く懐かしく思った。三人と一緒に過ごした生活。大切な時間。もう、戻る事はない。
胸の傷をそっと撫でた。これがその現実を突き付ける証であると同時に…私が両親に愛されていたのだと分かる事の出来る唯一のものだった。

「ミョウジ。お前には言っておかねばならない事実がある」

「教官、……どうしたんですか」

神妙な面持ちで肩を掴まれた。私は肩をすくめる。心臓が激しくざわついた。嫌な予感しかしない。全身が聞くべき事実ではないと拒絶しているような感覚。冷汗が伝った。…けれど、知らなくてはいけないのかもしれない。受け入れなくてはいけないのかもしれない。

『受け入れられる強さは、ないかもしれないのに』

自分の声が、意志が、勝手に脳の中を駆け巡った。
知りたくないでしょう?知っちゃいけない事実。あなたは受け入れられるのでしょうか?
自分の声に答える事も出来ないまま、私はバウゼン教官の言葉を聞き入れてしまった。

「お前の両親は死んでいる。後追い自殺、と言ったところか。一年前に」

後追い、自殺。一年前。それは、もしかして。

「私が…っ、撃たれたあの日…」

私が死んだものと思って、自分達で命を絶った。私が、二人を殺してしまった。私だけ生きていた。どうして、私だけが。――…そうだ、バダップ達が私を助けたから。

「っ、あ、あぁ…うぁああああああああああああっっ!!!」

『壊れてしまいました。とうとうその時がやってきたのです。復讐心の矛先は向くべきではない方向へと向けられました。ああ、彼女は何を求めるのでしょう』

間違いなどとうの昔にしていたのよ