飾りを入れた袋を片手に私達とサンダユウは保育園に向かう。小さな子たちがたくさんいて、笑って近づいて歓迎してくれた。
さすがにエスカバが絵本を読んでいたのには笑ってしまったし、バダップが人気なのも珍しい。ミストレは学園と同様、女の子に人気でサンダユウは頼れるお兄さんだと思ったのか、男の子と遊んでいた。
私は隅の方で折り紙の折り方を教えたりとか、絵を描いたりくらいしかできないけど。

お昼寝の時間がきて、みんなぐっすりと眠り出した。それを皮切りにか、三人の溜息が洩れる。げっそりとした様子でサンダユウとミストレとエスカバが声を上げた。まわりの子たちを起こさないようにしているし、何だかんだで楽しそうだし。

「三人ともいいお父さんになれそうだよね」

本音をポロリと口にしてしまうと驚いた目をこちらに向けられた。あれ、私なんか変な事言っちゃったかな。褒めてるつもりだったんだけど。
三人の視線から逃げるようにバダップに目を向けると、バダップの膝の上に子供の頭が二人分乗っていた。膝枕だ。心地よかったのか気持ちよさそうにしている。

「…ぐっすり寝てるね」

私の言葉を耳にしたバダップが少しだけ嬉しそうに口元を上げて、目を閉じる。名前を不意に呼ばれて振り向くと、頭を軽く撫でられた。

「準備、任せきりですまなかったな」

「平気だよ、皆手伝ってくれたから間に合ったし」

寝返りを打ってずれてしまった毛布をかけ直す私にバダップが真剣な表情を向けてきた。空気の支配。いつまで経っても変わらないこの感覚。

「…もし、お前が昔を思い返そうとしているなら止めはしない。だけど無理に思い出そうとするな。…これだけは、分かってほしい」

昔、一年前の私の知らない出来事の事。苦虫を潰したような表情をしてるバダップがその深刻さを物語っているような気がする。何があったのか私には分からない事。

「あの時と同じ思いは、させたくない」

ぼそりと呟いたバダップの言葉が帰り道を歩く私の脳内で繰り返された。何が言いたいのか分からずに私は思考をやめる。
それよりも確かめなければいけない事がある。今はそれを優先しよう。また、モニタールームへ忍び込まなくてはいけないのだから。

『それ自体が間違った選択だった。そう後悔するのは目に見えていないのです』

目を閉じておやすみ