―――…これまでが管理外の病院から退院した今現在までの経緯であり、過去であるわけだ。そうしてこうやって今も私達は小隊としてチームを組み、新たな理想を掲げている。

「あんな拷問した後でも平然と関わってくるからってエスカバ、教官と提督に向かって殺意丸出しだったよね」

「ったりめーだろ!あそこまでされて黙ってられねぇっての。ただでさえ俺らは生死彷徨うレベルだぜ!?」

あーイライラする!そう叫ぶエスカバはその怒りをぶつけたいのか、隣でにやにやと笑いながら言ったミストレに拳を振るう。暴力はーんたーいなんて気だるそうな声が響いた。ああ、また始まった、ミストレとエスカバの取っ組み合い。

「…さすがに、俺達が目を覚ました瞬間に泣きながら平手打ちしたお前には驚いたがな」

座り込んでいたバダップが取っ組み合う二人に目を向けながらぼそりと呟く。そう、バダップ達が目を覚ましたのは一ヶ月が過ぎそうになった頃。さすがにチームの全員に最悪の可能性がよぎった。少しずつ開けられていく目。唇がうっすらと動く。その様子を見た全員が歓喜の声を上げた。私を除いて。完全に開けられた目を見た私は無言で平手打ちをかました。乾いた音が響くのを皮切りに、涙が止まらなくなった。

『どれだけっ、心配したかと…!』

本当に、そうするしか感情のセーブが効かなかったのかもしれない。バダップの言葉に愛の鞭だと思えばいいじゃないと遠い目で答えを返せば、「うえっ、お前の愛の鞭とかいらねー!」なんて取っ組み合いしてるエスカバの声が届いた。私は無言ですたすたとエスカバに近付き、握り拳でごつんと脳天を殴ってやった。思い知ったか。

「……フッ」

声が、聞こえた。私もエスカバもミストレもみんなが同じ所へ目を向ける。バダップのほうへ。本人と言えば不思議そうな目をしてこちらを見返してくる。バダップが笑ったのだ、満面の笑みで初めて。それを見た私達はバダップに近付いて頬をつねってやった。

「何をする…!」

少しだけ顔を赤らめたりもしてみせて、自然と笑みがこぼれていた。過去に行ってよかった。行く前も、後も、大変な事が重なったけどそれはマイナスじゃない。
こうしてバダップが柔らかくなったのが、そう教えてくれているような気がした。

…そんな中で私はふと、記憶の片隅に引っ掛かっていたあるものを思い出す。
『Vシステム』と名付けられたあのファイル。深く調べる必要性が、あるのではないか。

振り返りし過去の片隅