『オペレーション・サンダーブレイク』が終わってからのオーガの経緯。酷いもので、私達は数週間の間、拷問を受けていたんだと思う。正直に言えば後半は記憶が曖昧なのだ。

「っ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

絶えずに響くのは誰の悲鳴なのかもわからない、言葉の叫び。血飛沫が舞うのも見たし、それは鮮明に覚えている。紛れもなく、私から血が飛沫を上げたのだから。

「ミッションの遂行に失敗した者達に処罰を!ましてや円堂守に感化されるとは…!」

ヒビキ提督とバウゼン教官の声で一層激しさを増す拷問。髪の毛を鷲掴みにされ、床に叩きつけられる。コンクリートの上で引き摺られ、私の仕事道具でもある右腕は高い位置から落とされた大きなコンクリートの塊によってぐしゃりと潰され、バキリという音を立てては力を失くす。

「許して下さい許して下さい許して下さい許して下さいっ、うあ、あぁ、ぐぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

また、聞こえる悲鳴。処罰を下す"断罪者"と呼ばれる職員の目元は黒い頭巾で見えず、ただただ、その口元だけがにんまりと引き裂けんばかりの笑みを浮かべていた。私は叫ばなかった、いや、叫べなかった。口につけられた猿轡によって。
かすり傷だらけの体は痺れ出し、口内からは鉄の味。だらしなく唾液が垂れる。腹部を何度も蹴られ、着ていた衣服は引き裂かれた。逃げられないようにと足を何度も踏み潰される。もはや叫ぶ力もなければ抵抗する気力さえない。

隣で、サンダユウが首を絞められた。ドラッヘも、ジニスキーも四肢のどれかひとつが赤黒く染まっている。イッカスやザコメルはもはや気を失って動かない。ゲボーとブボー、ダイッコは電気ショックを散々浴びせられ、悲鳴が轟く。
脱走を予想されたバダップやミストレ、エスカバの警戒態勢は厳重で、両手両足すべてをへし折られたのを目にした。それほどまでにヒビキ提督が"サッカー"を危険思想とし、憎んでいたんだと思わせるように。

「ふ、っ、――――っぅ!!」

立ち上がる術を失くした私は本当に無力だ。言葉を発せずに、涙が流れた。傷口に入り込むと激痛が走る。どうにもできない。びちゃりと、頬に血が付着した。
床が血で埋まっていく。私の意識はそこでフェードアウト。

自分の身がどうなったかさえ、理解できはしないのだ。そしてこの拷問があった事実は揉み消される。地下で行われた洗礼を知る者は当事者以外いない。

洗礼に果てしなく似た狂気の宴