八十年前の過去へと飛んだオーガは『オペレーション・サンダーブレイク』を遂行しようと試みた。
まずは世宇子中との対決。これは難なくこなす事ができた。とはいっても私は何もできない。
私の専門はあくまでもプログラミング。つまりは過去と未来を繋ぐ装置のデータの管理が専門だから、過去へ来たところで私にできる事はないのだ。
その代わりと言ってはなんだけど、万全の状態で世界を繋いだから未来に戻れなくなるとかそういうことはないと保証はする。

そして、とうとう標的である円堂守が率いる雷門中との対決が来た。
雷門中のベンチに目を向けた私は言葉を発する事さえできない。何故なら、そこには、

「ヒビキ、提督…?」

雷門中の監督として、立っているその人はまさに瓜二つだった。私はゴーグルをつけてコンピューターに接続。モニターに映るデータは八十年前の時間を示す。じゃあ、あれはヒビキ提督の祖先にあたる人…?ならば、何故。

ホイッスルがスタジアムに鳴り響いた。ベンチに座っているだけの私は何もできないけれど、明らかにこちらが優勢、だったはずなのに。

空から降る、少年達。その少年達の時間は未来のもの。何とも大胆な作戦で抵抗してきたのだろう。想定外の事態とはこの事を言うのだろうか。
『円堂カノン』と名乗ったその少年の存在を分析すれば、円堂守は彼の曽祖父にあたる。…こんなことが、ありえてしまうなんて。
彼が引き連れてきた未来からの助っ人によって試合の空気が雷門に支配された。試合は雷門の逆転で、オーガは敗北した。…何よりも、円堂守の言葉。それはベンチにいる私の意志さえも、変えてしまうほどのものだった。

「本当に強くならなくちゃいけないのは、ここじゃないのか?」

戦う"勇気"。私達のいる未来は、円堂の言う"仲間"や"友情"が歪んでしまったものが正義として存在している。それこそ変えるべき未来…そう言ったのだ、円堂守は。
自然と笑みがこぼれた。その原理とか、根本的な事は理解できなかったけれど、私や、バダップ達は今日を境にきっと変われる。そう思った。

「お前の思いだって、ベンチから伝わってきたぜ!」

私に目を向けた円堂はそう言って満面の笑みを見せる。ああ、そうか。だから彼の思想は語り継がれるのか。
バダップと円堂が握手を交わそうとした時、強制送還プログラムが作動した。きっとバウゼン教官が作動させたのだろう。
円堂カノンは私に目を向けると、「また会った時には、一緒に未来を変えようね!」なんて言葉を投げてきた。私は声に出して笑った。そうしたいなら私を探すとこから始めてよね。

戻ったら、どんな処罰を受けるのだろうか。そんなことはどうでもいい。きっと、私達の誰もが同じ事を思っている。"己の意思で、未来を変えなくてはいけない"って。

衝突から誕生