バキッ。音を立てたのは私の骨ではなくて、木だった。
木がクッションの役目を果たしたらしく、死ぬ事はなかったけれど体の節々が悲鳴を上げた。多分そのまま気を失ってしまったんだと思う。
目が覚めた時、私はエスカに担がれていた。体が痺れていて抵抗できないけど出せる力で思い切り頭を殴ってやった。
女子を担ぐってありか。もっと優しく扱ってくれたっていいのに。

「全然痛くねーっての」

「麻酔銃使うとか条件悪い…」

今の私の力は本当に微弱なものらしい。お前を木から助けたのバダップだから礼言っとけよ、だって。元気が出るまでは多分無理。


「それで?命令って何なんですか?」

執行室に連れ戻されて椅子に座らされた。のはいいけど扱いが酷い。脱走したとは言えど足を縛るまでやらなくてもいいじゃない。

「こちらの説明が不足していた。改めて説明させてもらう」

空気が変わった。一瞬にして支配される。さすがというか何と言うか…政治家と将軍の血を引いているだけあってその言動にさえ威厳がある。

「君は見ただろう、『オペレーション・サンダーブレイク』を。そして解いてみせた。表示されたプログラムを」

「あのプログラムはオレ達が仕組んだもの。外部から入手した高度なプログラムだったんだよ?」

冷淡な目で私を見据えるバダップの説明、そして口元に笑みを浮かべたミストレーネの補足。

「…つまり、目的は?」

「テストだ。あれはお前の力試し」

バダップが立ち上がったと共にミストレーネとエスカがバダップに向かい、跪く。バダップが表情を変えずに、私に手を伸ばしては口にした。

「君には俺達の小隊、及び『オペレーション・サンダーブレイク』の為に結成されたチーム『オーガ』のプログラマーとして入ってもらう」

ああ、私はただの興味本位だったのにどうしてこうなったの。

既に君は手中にいたのさ