(もうちょっとで届きそうなのに…!)

限界まで背伸びをしながら頼まれた箱を取ろうとはしたものの、指先が触れるだけだった。生憎の事、近くに脚立は見当たらなくて取りに行くにも時間がかかるし何より面倒だった。本当にもう少しだから、ともう一度背伸びをして手を伸ばす。

「何してんだよ、お前」

「っ、わわ…!」

不意に背中からかけられた声に私は気を取られてしまう。指先に引っ掛かって落ちてきた箱をなんとかキャッチしたものの、足がもつれてバランスを崩しかける。ぐいっと、腕を引かれた。不動君が私の腕を引いてちゃんと立たせてくれたのだ。

「届かねぇならめんどくさがんねぇで脚立使えよバーカ」

「…ご、ごめんなさい」

私と彼との距離はとてつもなく近くて、残り数センチというところまできていて、掴まれている腕が異常なほどに熱い。キスできそうなくらいの距離の中、やっぱり彼は平然としていて彼氏のいる私なんかよりも数倍慣れているんだ、と思わずにはいられなかった。