※劇場版のちょっと前あたりのお話 「えっ、フレンとユーリ、シゾンタニアに赴任しちゃうの!?」 あまりにも突然の事に驚いてしまった私は茫然と、目の前にいるフレンを見つめる。フレンはいつものように真面目で冷静な面持ちで淡々と赴任の事を口にするのだった。 私は帝国騎士団に入っている父を追うように私も騎士団に入っている。下町にいた頃からフレンには世話をしてもらっていた事もあり、彼を追いかけて入団したのも理由のひとつ。いくつか歳は離れているけど私とフレンは恋仲で…あまりにも急な赴任に少し悲しさを覚えてしまった。 「シゾンタニアに行けばいつ戻ってこれるか分からないんだ」 「そ、そっか。…仕方ないよね!フレンはフレンでお仕事で行っちゃうんだから、私もしっかり頑張らなくちゃ!」 「いつもゆっくり話す事も出来なくて…本当にすまない」 目を伏せながら言うフレンに私は一生懸命の笑顔を作って大丈夫だよと笑ってみせた。大丈夫なんかじゃないよ、遠くに行っちゃうなんて本当は嫌。けれど仕事に私情を挟んじゃいけない。ああ、私もフレンと一緒にシゾンタニアに行ければいいのにな。ちょっとだけユーリが羨ましく思えた。 「…あのさ、ファースト」 「どうかした、フレン?そんなに心配しなくても私は大丈夫、心配しないでよ。フレンが無事に帰ってきてくれればそれだけでも嬉しい。我儘言わないから絶対にそれだけは守ってね」 私がへらりと笑えばフレンは少し寂しそうに顔を歪める。彼の顔を覗き込むと私はそのまま抱き寄せられた。耳に、首筋に彼の吐息が吹きかかってくすぐったいけどそれ以上に私は嬉しかった。ぼそりと耳元で彼が呟く。 「僕のほうが寂しく思ってたりするかもしれないけれど、絶対に帰ってくる」 「ありがと、フレン。私も寂しいけどフレンに手紙書いてあげるからね」 フレンの言葉に私は恥ずかしさと愛しさを感じながらいってらっしゃいと心から笑って呟いた。 |