グランコクマにも暑い時期がやってきた。ピオニー陛下の厚意もあり、ファーストの部屋には冷風を起こす音機関を設置してもらってはいる。そこまではよかったのだけれども、

「暑い、離れて、くっつかないで。」

「いやー動くのが面倒なもので」

まるで語尾にハートマークでも付いているかのような言い方にイライラする。今自分の膝の上に頭を乗せているのは何故だ、いつ来たんだジェイド。例え部屋が冷えていたとしてもそもそも人と密着していたら暑いのが分からんのかコイツは。

「ともかくどいてよ、暑い」

「おや、冷たいですねぇファースト。この年になると体の節々が痛くて動きたくないんですよ、もう少しいたわってくれてもいいじゃないですか」

はっはっはと乾いた笑い声を出しながらジェイドは言ったがそれが癪に障る、腹立つ。

「皮肉を言えるくらいなら元気でしょうがアンタは…」

…もうなんだか面倒だ。むすくれた表情をしながら腕を組みもう一度寝ようとする私を見て二度寝でもするんですかとジェイドが問う。

「…もっとぐっすり眠ってたかったんだけどジェイドのせいで目が覚めちゃったんでしょ?」

「それもそうでしたねーいやーすみません。案外ファーストも鈍いんだなと思いまして」

鈍い。何に、鈍いの。訳が分からない。そもそも何に対してなの、何のことなのと疑問が頭の中で固まりこんだ。

「気が付きませんか?」

考えているときにジェイドがそんなことを言うものだから私は単刀直入に聞くことにした。

「鈍いって何が、」

「これですよ、これ」

そう言われて膝を指先でつつかれて驚くのと共にやっと気が付く。他の人の目線から見れば膝枕、だ。

「甘えてるのが分かりませんか?」

さらりと出されたその答えに思考が止まる。顔を紅潮させた私を見たジェイドが笑いだしてイライラする。

「ひどいですねー。私も一応人間ですから甘えたくなる時ぐらいありますよ?」

笑って嫌味を言うジェイドにいつも通り腹が立って、いつもの思考に戻って。いつまで経っても乱されてばっかりだ、コイツのペースに。それが好きすぎる証拠だなんて正直認めたくない。その嫌味に嫌味を返してやろう。

「本当にアンタって奴は嫌味を言う時が一番楽しそうね」

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