…正直驚いた。あのいつも嫌味ったらしい大佐が。珍しいこともあるものだ。ルークの話を聞くと、朝から大佐は様子がおかしかったらしく集合場所のカウンターへ行こうとした時に倒れたとのことだとか。

何にせよ私を除く女性陣、ティアとアニス、ナタリアの三人は別行動をしていて最低でもあと二日ほどは戻ってこない。仕方なく自由行動を取ることになり、ルークとガイは出かけて行った。

どうやら大佐は寝ていたようで小さな寝息が聞こえる。本当に熱を出しているみたいだったし、何よりも苦しそうだった。

「おや…ファースト、ですか…?」

「大佐、起こしちゃいましたか?」

ごめんなさい、と苦笑いして謝ると元々眠りが浅いものでと大佐は肩で息をしながら笑って言った。

「何だか子供の頃に戻ったみたいですよ」

「それじゃあ私はお母さん、ですか?」

食事を作るために部屋を出ようとした時、大佐は私の服の裾をつかんで引っ張る。大佐は私の手を取り…自分の頬にひたりとつけた。

「ファーストの手は冷たくてちょうどいいですね」

甘えるような大佐の仕草が意外すぎて、頬を赤らめながらも私は大佐を見つめた。熱のこもった大佐の肌に触れていることで指先が熱くなっていく。それだけじゃない。恥ずかしさも半分だ。

「だってファーストは今『お母さん』、なのでしょう?」

くすりと笑いながら大佐はいたずらっぽくそう告げた。ぱくぱくと口を動かしながら固まっている私はやっとのことで声を出す。

「―――っ!ね、熱があるんだから寝ていてください!ジェイドのバカっ!」

手を引っ込めた私は足早で部屋を出て大きな音を立ててドアを閉めた。

「本当に飽きないですね、ファーストをからかうのは」

笑いながら大佐はぽつりとつぶやいたけれど、私の耳には届いていない。

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