「シンク。ねぇ、シンクってば」

ドアの向こうからファーストが僕を呼ぶ声が聞こえた。しぶしぶドアを開けるといきなり差し出された食事が見えた。とりあえずトレーを受け取って、のせられているサンドウィッチとスープを見る。温かい湯気が出ていて出来立てなのが一目でわかった。

「さっき作ってきたんだよ。ここ二日くらい食べてなさそうだったし」

即席だけどね、と私は苦笑いしながら言った。

「このくらい僕も作れるよ」

「どうせめんどくさがって作りに行く気ないクセに」

図星。作りに行くの面倒だから多分ファーストの言うとおり行かないだろう。

「ともかく何かしら食べておかないと、ね?」

僕が食べ終わるとファーストは食器を手にとって部屋を出ようとした。

「ぁ、そうだった!」

何かを思い出したような私は歩く足を止めて、床に食器を置きくるりと僕のほうへ振り向いた。

「まだなんかあるの?」

ぶっきらぼうに聞いてもファーストはにこにことしたままで。それがだんだん腹立たしくなってきて舌打ちをする。それでもファーストは笑ったまんまだ。ファーストが近付いてきてすぐそばにくると僕の仮面を外して手を差し出した。その手に握られていたのは淡い色でまとめられた花束で。

「お誕生日おめでとう、シンク!」

空っぽの心に入り込んでいたのは、ファーストの笑顔だったのか。

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