路地裏をくぐり抜けた苗字が向かったのは街の外れにあるバスケットコート。
今までこんなところがあるなんて知らなかった。苗字はコートに入るとシューズに履き替えてボールを手に取る。
先にコートにいた数名の高校生くらいの集団に軽く挨拶するとミニゲームを始めた。

必死にボールを追いかけて、高校生を差し抜いてシュートを打つその表情はとても凛々しくて。
リングをくぐり抜けた時の笑った顔は普段学校にいる苗字からはとても考えられないものだった。
随分と時間が経ち、高校生が切り上げた後も苗字は何度も自主練を繰り返す。
切れない集中力は異常なほど。けど胸に突っ掛かる何かは一向に取れなくて、晴れなくて。

「そこにいるんでしょ、風丸君」

「…気付いてたのか」

カシャンとフェンスの針金に手をかけると近付いてきた苗字はすぐそばでストレッチを始めた。
私ね。苗字の口からいつもとは違う、柔らかい声が出た。

「バスケ、大好きなんだ。本当は今のメンバーでも楽しくやっていたい。けれど、」

それは受け入れてもらえないんだよね。疫病神だから。
悲しそうに目を細めながらボールを見つめた苗字は私は放課後週3くらいはここにいるから。
ぽつりと呟いた苗字はじゃあね、なんて俺に声をかけると小さく手を振った。

これから、ちょくちょくここに来てみようか。
そう思ったのは苗字へ対するただの探究心だっただけ。そう思いたかった。