提出し忘れていた課題を持ち、教科担任のクラスへと足を進めるとそこには一人の女子の姿があった。
そいつの机のほうへと目を向ければツンとした除光液の刺激臭。
油性で書かれた言葉のひとつが目に付いた。『疫病神』。
一体どういうことかと思った時、その女子は鞄を手にして俺の横をすり抜けていった。
一つ忠告しておくけど、そんな彼女の鋭い声が俺の耳に届く。

「私に関わらないほうがいいと思うよ。…あんたのいるところとは次元が違う」

そんな一言を残して。次元が違うとはどういう意味だったのだろうか。
ついさっきまでいた机にはプリントやノートの切れ端が散乱したまま放置されている。
バスケットボールのマスコットがちぎられてコロリと転がっていた。

「苗字名前、か」

確か鬼道の幼馴染だとか聞いたことある気がする。実際に見たのは初めてだった。
どうしてそんな事をしたのかは分からない。
散乱したノートの切れ端にペンを走らせた俺は教科担任を探しに教室を後にした。