練習を切り上げて休もうとした時、ベンチの前にいたのは苗字だった。

「どうしてお前が?」

そう問えば少し戸惑った様子を見せて一言、
「この間のお礼言いそびれてたから…」と。律義な奴。くすりと笑ってしまう。

「関東大会、決勝進出が決まったんだ」

「そうか、よかったじゃないか」

「去年みたいなこと…繰り返さないように全力を出す。だから、」

風丸君も頑張れ。自分の言いたい事を言いきって、強気のくせに人見知りな苗字は俯いた。

「ありがとう。お互い頑張ろうな」

声に出すと練習再開の指示が出される。グラウンドに足を進めると鬼道がぽつりと一言。

「以前に比べてあいつも進歩しただろう?」

「ずっと前の冷たさに比べたら、な」