夏休みに突入してから有人がFFIの代表になったと聞いた。
アジア予選が始まった頃、私にも関東大会の決勝が迫っていた。
既に全国出場は決まってはいるが優勝して全国へ行くこと…それが私の目標だ。
決勝を行う日とイナズマジャパンの第2回戦は同じ日。
出来るなら応援したいと思っていたけどこればかりは仕方ない。それに、

(風丸君にこの間のお礼、してない)

雷門中のグラウンドまで自転車を走らせるとちょうど練習中。代表選手達の目はとても真剣。
フェンスから覗くように見ていると後ろから肩を叩かれた。

「ひゃっ!?」「きゃっ!…ご、ごめんなさい驚かせて」

振り向くと肩にかからない長さで毛先が外へはねている女の子が申し訳なさそうに私を見ていた。

「こちらこそ、ごめんね。…えっと、」

「秋さーん、どうかしましたかー?」

聞き覚えのある声の主はもちろん春奈ちゃんだろう。
私に気がついたやいなや「風丸さんに用事、ですか?」と耳元で一言。
やっぱりこの子は鋭いと改めて感じた時には右手を引かれていて間近で練習を見る事になってしまった。