風丸君はとても優しいと改めて思う。
澄み切った空を思わせるような長い髪がゆらゆらと揺れる度、私は安堵する。
そっと息を吸いこんで吐いて。当たり前の呼吸という動作。
熱が出た時は苦しかったけど今は大丈夫。何日かは寝込んでしまったけれど。

(風丸君、律義にお見舞い来てくれたし)

あの一日だけで私の家を覚えたのかな。そんな事を考えていると肩を叩かれた。また、あいつら?

「おはよう、大丈夫になったのか?」

「か、ぜまるくん」

彼の姿を見て少し安心する。何度も何度も。

「ん?お前が苗字か?」

見覚えのあるオレンジのバンダナ。有人といつも一緒にいる円堂君か。円堂君は明るい笑顔を向けてきた。
最初はやっぱり怖かったけど、この子なら大丈夫。有人も変わるわけだ。
風丸君が少しだけむすくれた表情をしていたけれど、私はあまり気に留めなかった。