「あ、あの!名前さん!」 唐突に私の割り当てられた部屋に来たと思えば名前を呼ばれて少しびくりとする。手を強く握りしめた立向居は部屋に入れたけど立ったまま、私はしどろもどろするしかない。 「どうしたの、立向居…?」 俯いたままの立向居は「あの、その…」と言葉を詰まらせているようで立向居が落ち着いて言葉を発するまで待ってみようと思った。それでも発するには時間がかかりそうで待ちきれなくなってしまった私は立向居の頭をぽんぽんと軽く叩いた。 「まずは落ち着いて。それから話してくれればいいからさ」 「…唐突にお願いするのもどうかと思うんですけど、」 少しだけ落ち着いてきたのか立向居は言葉を並べていく。私はそれを聞いていたけどだんだん顔から一気に熱が放出していくような気さえした。そんな真剣な眼差しで「抱きしめてもいいですか」なんて言われたら堪ったもんじゃない。惚れた弱みって怖い。こくりと頷けば強く抱きしめられた。そんな満面の笑みで抱きしめられたら何も言えなくなってしまうのに。 |