「ねぇ、髪縛ってもらえる?」



「別にかまわないよ、ゴム貸して」



ソファーに腰掛けてちらりと私を見ながら頼んできたミストレからくしとゴムを受け取ってミストレの髪を掬い上げた。…うわ、見た目通りさらさらでつやつや。どうしたらこんな風になるんだ、男のくせに。

心の中でぶつぶつと文句を言いながらみつあみを結っているとくすくすと聞こえる笑い声。その主は紛れもなくミストレのもので「どうかしたの?」と問いかけた。



「くすぐ、ったい…」



…へぇーほぉー、全校生徒中二位のミストレーネ・カルスさんはくすぐったいのが苦手ですと。するりと首筋に指先を滑らせれば何とも言い難い声が室内に響く。それが面白くて仕方なくなった私は手早くみつあみを結い終えるとそのままミストレをくすぐりまくった。



「っ、あの、さっ!」



「うわっ!?」



くすぐっていた右手を不意に引かれて私は前のめりになる。ミストレの顔があと数センチのところにまで迫っていた。耳元で囁かれて背筋がぞくりとした。どういう状況だよ、これ。



「度が過ぎると何するかわからないよ?」



その言葉を皮切りに私のいたずら心は消え去って頭は真っ白になった。嫌な予感しかしない!



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