「い、ちろうた」



絶望に満ちた、というのがぴったりな表情の名前がこちらに目を向ける。俺はくすりと笑って名前の手を引いた。刹那、その腕に鈍い痛みが走り、乾いた音が響いた。ああ、振り払われたんだ。



「い、やだ…嫌だ、嫌!なんでエイリア石なんか使ってるの?どうして、一郎太!」



いつもは心地良いものだったはずの名前の声が、涙を流すその表情が心底俺を苛立たせる。強くありたかった。お前の前で弱さなんか見せたくない。ずっとずっと一緒だったから、守りたいんだ、お前を。何故認めてくれない?こんなに強くなって戻ってきたのに。



「私の憧れだったのに。優しかった、真っ直ぐだった、一郎太が」



その言葉ですべてが崩れる。認めてくれ、愛してくれ、俺ばかりが突っ走るのは嫌なんだ。愛したい、愛されたい、お前以外必要ない。誰にも渡したくない、一緒にいてくれればいいんだ。



引き寄せて、噛みつく勢いでキスをして、絡めて、絡めて。背中に爪を食い込ませて、こいつが俺の一部になったらどれほど幸せなのだろう。抵抗する名前の唇に少し歯を立てれば美味しいとは言えないはずの鉄の味。名前の血は今の俺にとって甘いもの。そのまま体の至る所に歯を立てた。ぼろぼろと泣きながら何度も俺の名前を呼ぶのが愛おしい。名前の怯えた顔を知っているのは俺だけ。ああ、なんて幸せなんだろう。



「狂って、る」



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