好きなんだ。

そう伝えられたなら、私はこんなにドキドキしなくなるでしょうか。
一言が言えないって本当だと思う。伝えて傷つくというなら私の中で一生、留めておけばそれでいい。
すれ違う度に近くなる距離に心拍数が上がっていく。私これで死ぬんじゃないかな。

「ねぇ、」

名前を呼ばれて振り返った先に目に付いたのは一面の赤。彼の髪の色。
どうかしたの。その言葉を紡ぐ前に、私は言葉を失った。否、失わされた。

触れる唇の温度が、あまりにも熱い。

「ヒ、ロト君」

もうちょっと順序とか、ムードとかあるでしょう。なんて言葉は言えない。
ただ、彼は本気で私の事を好きなのかとか、たぶらかされただけなのかのほうが気になって。

「俺はずっと君のことばっかり見てたんだけど」

刹那、いとも簡単に時は止まり、本日二度目の口付けが交わされた。


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