Novel
ダウト (※腐注意 諏佐今)

「その4、ダウトや」
今吉の声に、トランプを裏返してみせた。出てきたのはハートのQ。
「おー、当たっとる当たっとる。今日運ええなぁ」
「いつもこんなもんだろ。…はあ、お前にこの手のゲームで勝てる気がしねーよ」
「そうやっけ?ま、とりあえず場のカードは全部諏佐のモンやな〜」
そう言って押し付けられたトランプの山と、ゲームが始まってから一向に減ってくれない手札を見て、オレは溜め息をつく。オレもそこまでダウトが弱いわけじゃない。ただ、今吉が強すぎるんだ。…いやまあ、この手の心理戦にめっぽう強いのが売りだから当たり前っちゃ当たり前なんだけどな。
「なー、諏佐」
「なんだ?」
不意に、今吉が手を止めて話しかけてきた。
「いや、ワシらももーすぐ卒業やんなー、って」
「そうだな。まあ青峰は最近練習出てるみたいだし、若松もちゃんと主将やってる。チームの方に心配はいらねーだろ。…6」
「や、チームの心配やなくてやなー…」
今吉は手札を見てむむ、と唸り場にトランプを出した。
「7」
「ダウト」
「ハズレや」
「…マジかよ」
だが今吉が出したのは紛れもなくジョーカーだった。…よくよく考えれば、今吉があんな分かりやすい動作するわけねーよな…。
「…で、何が言いたいんだ」
「んー?…まあ、アレや。ワシら大学違うやろ?卒業したら離れてまうやん」
「まぁ、そうだな」
「遠距離恋愛ってヤツやな〜思うて」
「…そうなるな」
今吉は関西方面の大学に進むらしい。オレは関東圏の大学を選んだから、会うのは精々数ヶ月に一回がいい所だろう。
―こうして毎日顔突き合わせる事も、あと少しで無くなるんだな…。
「まー話したりだけなら電話やらメールやらあるんやけどな〜」
「人の考えてる事読むなよ」
「お?やー、スマンスマン…っと、ワシラスト一枚やん…13」
「え、」
コイツ、人がしんみりしてる間に…!
「ホラ諏佐、早よ出してや〜」
「ったく…、1」
「ほい、2」
ダウト、という前に今吉はトランプをめくる。その面にはスペードが2つ、はっきりと描かれていた。
「…お前、本当に性格悪いよな」
「わはは、よう言われるわー」
今吉は、口の端だけあげていつもの読めない笑みを見せた。
―ああ、これからもオレはコイツに振り回されんだろーな。
「まあそん時はよろしゅーな」
「だから読むなっての」

-END-

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