時の流れとはたいそう早いもので、レオンが転校してきてからもう1ヶ月。校内でレオンを知らない者はいないだろう、それくらい彼は有名人になってしまった。驚くべきことにこの短期間で親衛隊まで作られたらしい。ちなみに活動内容はあたたかく、レオン様の迷惑にならないよう影からそっと見守ること。そして支えること。規則は、抜け駆けをしない。名前を呼ぶときはレオン様。わたしはもちろんそんなものには入っていない。いつだったか、紹介するとレオンの生写真がもらえるキャンペーンを行っていたらしく、レオン信者でもある友人は全力でわたしを勧誘してきたけれども。今日なんてレオンの噂を聞きつけてか、校門の外には他校の女子生徒たちが溢れていた。何人釣られたのだろうか、なんて好奇心で校門の外にいる他校の生徒の人数を指折り数えている間に、4限目の終わる鐘が鳴った。

「名前、今日こそは一緒に昼食を取らないか」

「今日も無理なんじゃないのかな、レオン様?」

教室の外に他クラスの女子生徒、下級生。教室内では今にも話し掛けてきそうな女子生徒、部活へ勧誘するべく目を光らせるスポーツマンたち。レオンは小さく溜め息を零した。実はレオン、転校初日からこうしてわたしをお昼に誘ってくれたのだけど、未だに一度も一緒に昼食を過ごしたことはなかったりする。

「また今度ね」

”また今度”なんて来ることはないだろうと思いつつも笑いながら、わたしは友人の待つ席へと移動した。移動するなりレオン様も連れてくればいいのに、なんて友人にぶーぶーと文句を言われる暴挙。ひどい。

お弁当を開けば、たまたま大量の人々に連れ出されそうになっているレオンの姿が視界に入った。握ったフォークでからあげをひと刺しすると、いつの間にかこちらを向いていたレオンとぱちり、目が合って。その瞬間、囲まれていたレオンが取り巻きたちを振り払い、此方へ駆け寄ってきた。一緒にお昼を食べていた友人がきゃあきゃあと騒ぎ出す。間髪入れずに腕を掴まれ、ぐいと強引に引っ張られながら教室の外へと連れ出されてしまった。背後がざわざわと騒いでいるが、気にすることなく普段と変わらず落ち着いた雰囲気でレオンは歩を進めている。辿り着いた先は、体育館倉庫。



「…突然すまない」

「いや…大丈夫…!びっくりしたけどさ、」

わたしは教室にいたときのままの状態―からあげの刺さったフォークを片手に、呆然としながらも跳び箱の上に座った。

「我慢出来なかった」

「えっ」

「最近は朝早くに登校しても二人きりになる機会がなかったからな」

「あの、レオン……?」

「もっと名前と二人になれる時間が欲しい」

「ちょ、急すぎてあの…」

「…駄目か?」

「いや駄目じゃないです…って、何が!?」

気付いたらぎゅっと抱き締められ、わたしの頭はますます混乱に陥っていく。状況もさっぱりわからないまま、レオン信者が見たら発狂するだろう体勢で固まっていた。からあげの刺さったフォークを片手に。


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