次の日。教科書がまだ揃っていないレオンを、隣であるわたしが一式届くまではしばらく面倒見ることになった。勿論わたしが立候補したんじゃなくて、担任が隣なら適役だろうと勝手に推薦しただけ。とは言っても、教室内で唯一くっついてる机と机は痛いくらいに目立つ訳でして。昨日の挨拶だけでも、クラスメイトの女子たちの心を鷲掴みにしたレオンである。隣のわたしはこれから先しばらくは肩身が狭いんだろうな。頬杖をついて、窓の外を見つめた。校内の桜も満開の時期は終わったから、後は散るだけ。ちょっぴり寂しい。

「名前、おはよう」

不意に聞こえてきた声に驚いて、かくんと頬杖が崩れた。人っ子ひとりいないこの教室の中、わたしの隣でレオンが鞄を下ろしている。

「あ、レオン…おはよう。朝早いんだねぇ」

「俺はこれが普通だ。それに俺より早く登校している奴が人のことを言えるのか?」

「…誰もいない教室が好きなんだもの」

「何故だ?」

「……んー、教室をひとり占め!みたいな?」

「…なら、これからふたり占めになるぞ」

「え?」

「悪いな」

わたしの口はぽかん、思わず目も見開いてしまった。本当に、なんだかとても不思議な人だ。ふたり占め、なんて。そんな発想はなかった。そんな会話を交わしている内に、女子軍団がきゃっきゃしながら登校してきた。こちらを見るなり、レオンの周りを包囲するように集まってくる。飛び交う黄色い声は、1限目が始まっても止むことはなかった。

(さっすがレオンさん…)

数学の時間。レオンは期待を裏切ることはなかった。何故なら散々習ってきたわたしですら頭を抱える程の謎の数式を、初見のはずのレオンが隣であっという間に解いてしまったから。逆にわたしが教えてもらう立場になっているので大変お恥ずかしい。しかもレオンは眼鏡、まさかの眼鏡。ここぞとばかりの眼鏡。大事なことなので3回言ってみました。眼鏡を押し上げる姿は、やっぱり絵になっていらっしゃる。故に頬を赤らめながらもこちらをちら見してくる女子も急増中。教室中の視線がレオンに注がれた。それにしても美形で優秀って…この展開は、



もしかして:運動も出来てしまう?



いやいやそんなまさか。そういえばちょうど次の授業は体育じゃないか。これだけ完璧なんだもの。きっとさすがに運動くらいは苦手だったり――









キャアアアァァァ










――する訳がなかった。体育館にて、半面に別れて女子はバレーに男子はバスケ。白熱するバスケの試合に、女子たちは自分たちのバレーの試合を放棄してまでの観戦である。そこで一際目立っているのはバスケ部員ではなく、転校生レオン。全体を把握しながら、しなやかな動きでドリブルやらパス。…あまりルールは詳しくないのでわたしにはよくわからないけど、レオンの圧倒的な強さだけは初心者のわたしでも十二分に理解した。しかも自身で何度もシュートは決められるのに、仲間にも見せ場を与えていたりするから尚更かっこいいと女子軍がしびれている。そんな時に大勢の見守る女子たちの中の誰かひとりが、レオンは王子様みたいだと言った。否定する者はだれ1人おらず、みんな同じように頷いた。










王子様、か…





ハマリ役すぎる。


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