門をくぐり抜けると、レオンが足を止めて無線を繋げた。きっと我らがハニガンからの連絡だろう。
「そうだハニガン、こっちで生存者を見つけた」
「!!」
「あぁ。…あぁ、わかった」
ハニガンとの会話を終わらせたのだろう、無線を切ったレオンを下から覗き込むように見つめていると「一応、お前のことも報告しておいた」と頭を一撫でされた。レオンに頭を撫でられるの、好きだなあ。なんて1人でにやにやしてたら急に腕を引っ張られ、レオンの腕の中にすっぽりと収められた。
「レオン……!?」
不可抗力だろうが抱き締められたことに違いはない!美味しい展開ごちそうさまです!ありがとう神様!レオンいい匂いです!はすはすはす!心の中ではそんなことばかり考えるも、打って変わって平然な振りを装いつつ「どうしたの?」なんて小首を傾げてみたり。我ながら小悪魔ちゃんてへぺろ。木の陰に隠れるように身を潜めている最中、無言のままレオンは懐から双眼鏡を取り出した。村の方向を暫く見つめた後、それはそれは深い溜め息がわたしの耳に届く。
「悪趣味な村だ」
「何を見たの?」
なんて、答えは知っているけど。どうせ村の中央に運転手のおじちゃんが串刺しで火炙りされているんだろう。わたしが初めてその光景を見た暁にはもう…動揺し過ぎてアイテムページとか何回も開いてたからね。一見、真ん中でキャンプファイヤーしながら農作業に勤しむ素敵な村人たちに見えなくもない、けど。否、見えなかった。
「左から回る」
レオンの腕から解放され、少し残念な気もしたが走り出した彼のすぐ後を追って左の道を進んだ。此処は大嫌い。ゲームプレイ中、左の道に気付かず正面突破して何度ゲームオーバーの画面を拝んだことか。いや学習能力の無いわたしが悪いんだけど。つまりレオンは賢いってことです。はい。
とは言いつつもわたしたちより上にいる見張り役にはすぐバレてしまう為、結局はレオンも銃を使う羽目になるのだけど。とりあえずはガナードから逃げ回り尚且つ倒しアイテム回収、わたしもアイテム回収には必死に貢献。少しでも力になりたいもん。
「レオン!弾拾ったー!」
「よし、いい子だ」
わたしは犬かと突っ込ませて頂きたい。それにしても襲いかかってくる村人のガナードたちは、倒しても減るどころか寧ろ増えてる気さえしてくる。なにそれ怖い。一体どこから湧き出てくるんだろう。最早、夏祭りで射撃する光景を見ている気分にすらなってきたから困る。わたしも戦えればいいのになあ。少しでもレオンの力に、なれれば。
「チッ…キリが無い。名前、あの家に行くぞ」
「あい!」
駆け込んだ先は勿論、あのイベントが起きる家だった。