結局同行することに決めたわたしは、小走りで銃を構えながら進んでゆくレオンの後を必死になって追っかけた。そういえば何故レオンは英語喋ってるのに日本語みたいに聞こえるんだろうとかわたしの日本語はどうして通じるんだろうとか色々疑問はあるけど、全部夢補正だろう!で都合よく片付けてみた。
バンッ
バンッ
「!?!?」
突然立ち止まったレオンはハンドガンを構えるなり2発ほど射撃。―と、ともに聴こえたカラスの鳴き声。わたしの足はブレーキが効かず、レオンの背中に思い切り顔をぶつけてしまう。
「ふがっ…」
「悪い、カラスがいた」
「名前は急には止まれないのだっ…!」
「何だそれ、日本の諺か?」
あいたたたと鼻をさするわたしを余所に喉を鳴らしながら笑い、カラスが残して行ったアイテムを拾うレオン。
「名前」
「ほ?」
「念の為持っておくといい」
「…なに、これ?」
「手榴弾だ、あとで使い方は教える」
「お、おう…」
「今は下手にいじるなよ」
手渡された小さなそれは、見た目からは想像し難い重さ。そっとカーディガンのポケットにそっとしまった。使わなきゃいけない場面に遭遇しませんように、と願掛けしながら。
くぅん……
「レオン!わんこの声!」
「ん?」
近くで犬の弱ったような、か細い鳴き声が聴こえる。その声だけを頼りにレオンの腕を引っ張りながら茂みの方へ歩を進めると、大きなトラバサミに引っかかっていた白い犬が横たわっていた。真っ白な毛並みなだけに、怪我をした足から流れる血の鮮やかさが嫌に痛々しく感じる。ゲームでも全く同じ場面を見たものの、元気のない尻尾の動きと辛そうな息遣いに胸が苦しくなった。
「かわいそうに…痛かっただろうね、よしよし」
「今外してやる」
「ポチはなんにも悪いことしてないのに…ひどい」
「ポチ?」
「この子の名前今つけたの」
「(日本人は犬に摩訶不思議な名前を付けるのだな)」
なんて会話している間にも足枷はようやく外れたのか、ポチは軽くわたしたちに向かって吠えた。それは感謝の言葉…なのだろうか。そのまま、怪我をした方の足を庇いながら奥の茂みへと走り去って行ってしまった。片膝を付いていたレオンは立ち上がり、ポチが消えて行った方を見据えながらぼんやりと心配の色を浮かべている。そんな彼の背中をぽんぽん、と軽く叩いてやりながら笑って。
「だいじょーぶだよ」
「…ああ」
「ポチー!元気でねっ!」
「こら、大声を出すな」
「むぐぐごめんなさい」
元気になって、いつかわたしたちを助けに来てね。ポチの消えて行った方へぶんぶんと大きく手を振りながら、再び先へと進んで行くレオンの後ろに付いた。