「名前…です…」
「名前…は、何故此処に?」
「えっと…道に迷って、」
咄嗟に吐いた嘘だけどそれでも信じてくれたのか、とりあえずはわたしが敵でないと判断したらしくレオンはハンドガンをしまい近くの木箱をナイフで壊し始めた。さっきの赤い箱はハンドガンの弾だったらしい。レオンは器用にリロードをしている。因みにわたしの頭はまだ現状処理が出来ていない。ただ此処がBIOHAZARD4の世界で、目の前にいる人物がレオンということだけは分かった。ゲームのし過ぎでこんなリアルな夢でも見ているのだろうか。
「此処は危険だ」
「え、」
タイプライターを打ち込みながら「お前はこれからどうするんだ?」と尋ねてくるレオンにわたしは小首を傾げた。
「此処に留まるのか、俺と行動を共にするのか」
わたしはふと考える。此処に留まっていれば、レオンが近くのガナードを全員倒してくれただろうから(ただの憶測だけど)確かに少しの間は安全かもしれない。先にも進まないから強い敵にも襲われなくて済む。けれど時が経てば村にいるガナードが此方にもやって来るだろうし、来ないとしても助けも何も来る可能性があるかもさっぱり分からないから結局は死を待つしかない。それなら危険かもしれないけれどレオンと行動を共にして、少しでも助かる可能性に賭けてみたい。例えこれが夢だとしても。
意を決したわたしは、出口へとゆっくり歩んで行くレオンの背中を追いかけ、軽く裾を引っ張り、
「一緒に行くっ」
はっきりと口にした。ぴた、と足を止めたレオンはほんの少し顔を此方に傾けて。
「死に急ぐだけかもしれないぞ。それでもいいのか?」
「何もしないで死ぬよりは…生きていられる少しの可能性を信じたい、から」
「そうか」
ぽん、と大きな手のひらが頭に乗せられる。夢とはいえ見知らぬ地に放り出されて恐怖心を抱いていたのか、不安だったのか、頭に乗せられた手のひらから伝わる優しさにひどく安心してしまった。思わず頬が緩む。
「えへへ」
「どうして笑ってるんだ?」
つられて柔らかく微笑んだレオンの横顔につい見惚れてしまった。ああ、なんて贅沢な夢なんだろう。