水分を十分に吸った制服から止め処なくぽたぽた水滴がたれてくる。ひとまず脱いだカーディガンを雑巾のように絞りながら小屋へ入れば、ちょうどレオンが濡れた髪をかき上げている場面に遭遇した。我ながらナイスタイミング。
(ぐは…イイ男!!)
「…あぁ、名前か」
(やっぱイケメン)
「面倒見れなくて悪かった。怪我は無かったか?」
「あ、うん!へいき!」
咄嗟にできたてほやほやの傷を思い出し、じんと痛むその部分にそっと手を添えて隠した。レオンにこの怪我がバレぬようにしなくちゃ。ただでさえ足引っ張っているのに、これ以上の心配や迷惑をかけたくはない。わたしは話を替えようとそれよりもきいて!と流れを変えた。
「あのね、わたし10人もガナード倒したんだよ!」
「ほう」
「まあ弾は使い切っちゃったんだけどね」
「それは仕方ない。初心者にしてはよくやった方だろう」
「えへへ」
「ショットガンは?」
「あ、はい」
湖へと向かいながら、腕に抱いていたショットガンを渡した。レオンが器用にリロードする姿を瞬きひとつすることなく眺め、じっと鑑賞。にやけが止まらない。うむ、それにしても今日のレオンはやっぱり色っぽい。綺麗な髪から滴り落ちてくる水が、なんとも言えない色気を増してらっしゃる。わたしのセクハr…熱い視線に気付いたレオンは不思議そうに小首を傾げた。
「どうした?」
「いや、今日のレオンさんはえろ…げふん、色っぽいなぁと思って」
「ハッキリ聞こえてるぞ」
「はて何のことやら」
「…名前こそ、その目のやり場に困る格好はなんとかならないのか」
「え、」
そういえばさっきの沼でびしょ濡れになったことを完全に忘れてた。言われてから気付く自分の格好。案の定、真っ白なYシャツは肌にぴったりとくっつき、下着が透けていた。
「俺が突然変な気を起こしたらどうする」
「大歓迎です」
「…阿呆か」
「いやもう変な気なんて我慢しないで起こしてください今すぐに!」
「あの警官、」
はい、毎度お馴染みの華麗なスルー入りました。いつの間にやらレオンは何事も無かったかのように双眼鏡で湖を凝視している。視線の先では例のイベントが繰り広げられていた。まず湖の中心までボートを漕いできた村人ガナードが、2人がかりで警察官を水中に投入。するとものすごい水しぶきを上げ、水面に現れた巨大な化け物がその警察官を一瞬にして食べてしまう。そしてまた、しんと静まり返る湖。そんな恐ろしい一連の光景を目の当たりにしたレオンは、唖然としている。
「……何だあれは」
「育ちすぎたお魚さんかと」
「封印が解かれた…ね。あれが噂のデルラゴか」
「不味そうだよね」
「あのボートに乗るぞ」
「あい!」
「今夜の夕食は焼き魚だな」
「あのわたしたった今不味いって言ったばかりなんですけど、あれ聞いてない」
リロード済みのショットガンをわたしに渡したレオンは、さっさとボート乗り場へと走って行く。それを受け取ったわたしも、急いで後ろを追っかけた。