「もう傷つけはさせないとか言ってたくせに」
「まだふてくされてるのか」
「冗談でも銃口向けられて、心が傷ついたもん!」
「はいはい」
「ちょ、流すとか…!」
「…ん、静かに」
先程砕け散ったばかりの岩の影に身を潜め、人差し指を口の前で立てて敵の様子を窺うレオン。対して文句の途中で発言を制されたわたしは、頬に空気をいっぱい溜めて膨らませた。ちらとこちらを見たレオンはすぐにくつりと喉を鳴らして笑い、口元に当てていた人差し指でわたしの膨らんだ頬を軽くつついた。
「風船だな」
「体重は重いので空は飛べませんけどね」
「知ってる」
「?!重くないし!」
「くく、自分で言ったことだろ」
なんだかんだ、こんなやりとりをしつつも沼までやって来れた訳で。レオンは岩影から飛び出すなり、早速リロードしたての銃で敵を蹴散らしている。わたしはショットガンを腕に抱えながら静かに立ち上がり、深い霧が立ち込める中ちゃぽん…と音をたてて沼に片足を入れてみた。
「うぇ、つめたっ…!しかも…なんか臭い…!」
すぐに足を引っ込め、とりあえず水に浸からない道を通ろうと後ろへ振り返った瞬間。
「おっぱいのペラペラソース!(としか聞こえない)」
あらびっくり、ガナードさんが真ん前にいらっしゃいました。とか言っている余裕は実は皆無でありまして。結局は予定変更、入るはずではなかった沼へ急いで浸った。
(とりあえず逃げなきゃ、)
いちいち行き先を阻んでくる水圧に苦労しながらも、なんとか必死に水をかき分けて先へ進む。制服が水分を沢山吸って、体が徐々に重くなっていく。それよりもいつの間にか水が腰辺りの深さに達していたことに驚いた。いっそ泳いで逃げればよかったかもしれない、なんて悔やみつつもそろそろ撒いただろうと後ろを振り返れば―
ガナードさんが、
10人いました
(いやいやいやいやなんで増えてんの!連れションか!女子か!)
兎に角、このまま逃げ切るのは無謀な気がしたのでショットガンを構えてみる。迫ってくるガナード御一行の中心に銃口を向け、何発かお見舞いした。ショットガンの威力はやっぱりすごい。射撃すると2本の足で体が支えきれず、真っ直ぐピンと立っていられない。とりあえず何発か無駄にしながらも狙撃に励んだ。これぞまさに数撃ちゃあたる精神!
「ガナードさんごめんよ、生まれ変わったら農作業頑張ってね…!」
最後のひとり目掛けて引き金をひいた瞬間、相手のガナードも最後の力を振り絞って斧を投げてきた。
「あぶなっ!」
間一髪で避けたものの、腕を軽く掠ってしまったらしい。カーディガンには少しずつ赤い染みが浮き上がってくる。とりあえず弾は使い切ってしまったけど10人全員倒したことに変わりはないのだ、どや。うん、まあ、レオンならどうせ軽く弾3,4発以内で倒せるんだろうけど。
「うー。痛い冷たい臭い」
なんて文句をたらしながら地に上がり、既に先の小屋にいる敵を倒してらっしゃるレオンの元へと駆け寄った。