「に、しても誰がいちいちこんなとこに弾とか置いといてるんだろ…」

「さぁな。でも有り難いことに変わりはない」

「ですな」

相も変わらず親切な小屋で、わたしたちは何のためらいもなくいくつか役立ちそうな物を持ち出した。泥棒?そんなの今に始まったことではありませ…げふんげふん。レオンは小屋から出てすぐの下り坂の前で立ち止まり、頭上を見上げた。傍にはいつかに見たトラップの標識。

「上が気になるな…」

隣から聞こえた呟きに、わたしは上を見上げながらゲーム内容を思い出す。丸くて大きくて固そうな岩、全力疾走、悪夢再び。ため息を吐きながらも、足を引っ張る訳にもいかないのでとりあえずその場で屈伸や伸脚を始めた。備えあれば憂いなし、うむ。

「暴れるなよ」

「え」

回旋をしていた束の間、気が付けばレオンの右肩に担がれているではないか。ほんの少し顔を上げれば勢いよく転げ落ちてくる大岩とご対面し、慌てて俯きレオンの背中にぎゅっとしがみついた。それにしてもレオンの足の速さがよくわかる。耳元では風の音がするし、速すぎて最早まわりの景色がただのボーダー模様にしか見えない程。そして今更だけどとってもおいしい展開なのでこれを機会に思いきり抱きついておこう。

「ぎゅうう」

「もう降りていい」

「ぎゅ……え?」

見事に砕け散っている大岩の断片を指差され、わたしは渋々レオンにしがみついていた手をそっと解いた。

「なんでわたしのこと担いでくれたの?」

「…それは前回一走りしただけで虫の息だった奴が言う台詞か?」

「ずびばぜん」

「謝罪よりもどちらかと言うと感謝の言葉が聞きたいんだが」

「…ありがとう」

「あぁ、高くつくぞ」

「え、金とるんすか…!」

「名前には俺がそんなに金の亡者にでも見えてるのか」

「え。いや、…はい」



(なーんて冗談だけど、)





カチ。





(………え)



「ちょちょちょレオン様冗談です!あの!え!いや!落ち着いてくださ!え!死ぬ!」

突然ハンドガンの銃口を頭に突き付けられ、今の一言がレオンの勘にでも触ったのかと思い慌てて否定した。あくまでも真顔のレオンは黙ったまま、迷うことなく引き金をひいていく。わたしは状況が把握出来ないまま、恐ろしさにぎゅっと目を瞑った。

「…残念ながら弾は入っていないが」

「………はい?」

「最近名前をからかうのが楽しくてな」

「は、はははは…」

笑えないオチに吃驚したわたしは、ただひたすら乾いた笑いを漏らしながら、その場にぺたんと座り込んだ。一方楽しそうにハンドガンにリロードするレオン様の姿がもう、悪魔にしか見えない。
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