爆発音で目が覚めた。なんとも物騒な目覚めである。目を擦りながらそっとまぶたを開けば、第一に視界へと飛び込んできたのは大量のカラスの死骸。第二に、それはもう綺麗に整ったレオンの顔―…
「ん……」
「目が覚めたか」
「…おはようございます?」
「おはよう」
見たところ、後におっきなあの子と戦う広場まで辿り着いたらしい。わたしがばたんきゅーしている間に、レオンは商人との売買を既に済ませたようで。無惨にも倒されたカラスたちから授かったアイテムを拾うなり、わたしを横抱きにしたまま先へ行く扉の前までそそくさと歩を進めた。
「そろそろ降ろすぞ」
「あ、うん!ありがとう、重かったよね」
「重すぎて骨が折れるかと思った」
「…がーん」
「真に受けるな、冗談だ」
そう言ってレオンは口角を微かに上げた。彼の冗談と本音を見定めるのは決して容易ではない。あまり表情がころころ変わるような人ではないから尚更。なんというか、真顔でアイーンされているような状態だ。要するに笑うに笑えない的な。そもそも何故わたしはレオンの腕の中に抱かれていたんだろう。ひとまず思い出してみようと目をつむってみた。
(あ、ヘビ…)
そうだ。わたし確かへびがシャツの中に入ってて、気を失っていたんだった。そのときから運んでくれたのかな。あれ、なんかわたしそれってただのお荷物じゃないか。…とか思ったけどその考えはすぐに払拭した。うむ、今に始まったことじゃないからね。
それより、ヘビはいずこへ?シャツの中はもちろん、辺りを見渡してもヘビの姿は見えない。扉を開くレオンの後ろからひょっこりと顔を出し、小首を傾げて尋ねてみる。
「あのヘビは?」
「あぁ」
思い出したように、レオンはポケットを漁ってひとつの卵を手のひらにのせた。
「…えと。つまり倒したと」
「そう言うことになるな」
「あとで玉子焼きでもつくろうかあ!」
「ヘビの玉子焼き、…ねぇ」
苦く笑うレオンの背中をずいずい押しながら、わたしたちは扉をくぐり抜けた。