涙は止まらないし、手は震えるし、足はすくむし、心臓はばくばくするし。そんなわたしの心境を汲み取ってくれたのか、レオンはそっと腕を差し出してくれた。その鍛え上げられた引き締まった腕に自分の腕を絡め、引っ付いて道なりに進んで行く。
「鼻水は付けるなよ」
「…ん」
軽く頷き、腕にしがみつく力を強めた。今はそんなイヤミでさえもときめいてしまうわたしがいるから怖い。わたしは何気なく歩幅を合わせてくれているレオンの凛々しい横顔を見つめながら、ずびずびと鼻をすすった。
「すするな、ちゃんとかめ」
「なにで?レオンの服で?」
「…置いてくぞ」
「ごめんなさい冗談です置いてかないでくださいレオンさ…ま……ん…!?」
なんて目にいっぱいの涙を溜めて謝っていた最中。レオンの手が腕から肩へ、肩から首へ、首から…仕舞いにはシャツの中へと忍び込んできた。涙がいっきに引っ込む。こんなときにレオンは発情でもしてしまったのだろうか、嬉し…じゃなくて、!
「レオンっ…!こんなとこで…ダメだよ…!わたしたち付き合ってるわけじゃないんだし…!」
「名前…」
「あ、ちょっ…レオン…!そんなとこ触っちゃだめっ」
「 1人で何してる? 」
ぴたり、そこでわたしはようやく事実を知る。レオンに視線を向ければ、こいつは一体何してんだ的な目でわたしを見ていた。何よりも、わたしよりも数歩先に彼はいた。ではこの、現在進行形でわたしのシャツの中でうごめく不思議な感触は一体…?
(そういえば、レオンの手にしては確かにぬめぬめしているとゆーか…)
恐る恐る、シャツの中を覗き込んだ。中にいたのは、
「ひっ……」
「名前?」
「へ、へびぃいいいいい」
そこでわたしの意識はぷつんと途切れた。