墓地なう。空は真っ暗、まるで闇色のカーテンに包まれているみたいな黒さ。レオンは相も変わらず素知らぬ顔で敵を倒してらっしゃる。ので、わたしはとりあえず射撃の練習にでも、と目に付く青コインを撃ち始めた。これがなかなかむつかしい。ゲームではあんなに簡単に操作出来たのに、実際に銃を構えてみると重量はあるし手ブレは激しいしで使い慣れやしない。
(これほんとに初心者用…?)
リロードも実はまだ一度も自分でしたことが無かったりする。ジャム、だっけ。一見、甘くて美味しそうな響き。けど弾詰まりする危険があるらしいからって初心者のわたしには絶対にやらせてくれない。まぁリロードするレオンがあまりにイケメンなので文句はありませんがね!
「名前、置いてくぞ」
夢中で青コインを狙っていると、教会の前にまで辿り着いていたレオンの声。撃った回数の割に合わない青コインの数には納得がいかなかったものの、このまま此処に居座っていると本当に置いてけぼりにされそうな気がしたので渋々とその場から離れた。教会を見上げるレオンの傍に駆け寄ると、どうやら丁度ハニガンから連絡が来たらしい。
「ダメだ、ドアがロックされていて中に入れない。あぁ、でも何かを嵌められそうなくぼみがある」
「ハニガンハニガンハニガンハニガンハニガン」
「……ほら、」
渡された通信機にわたしは目を輝かせた。と思う。久し振りに聞けるハニガンの声に自然と胸が躍ったんだもの。通信機を耳に当て、もしもし?と小さく囁く。
『名前?久しぶりね、元気かしら』
「元気だよ!あ、聞いて聞いてっ青コイン1個撃ったの!…15発くらい弾無駄にしたけど」
『あら、初心者にしてはやるじゃない』
「えっへっへ」
『じゃぁ私はそろそろ仕事に戻るわね。怪我しないように気を付けて』
「はぁい!じゃあね!」
通信が切れたのを確認してから、機械を耳から外してレオンに返した。
「楽しかったか?」
「うん、ありがとっ」
ハニガンと少しでもお話出来たわたしはすっかりご機嫌。歩き出したレオンの後ろに付きながら、思わずスキップをしてしまった。そして不自然に続く教会の裏側の道を進めば、やってきました恒例の謎解きパズル。レオンは眉を寄せながらダイヤル式のパズルを凝視し、何かの手掛かりがあるだろうかと熱心に3と4の目盛りだけを左右に動かしていた。
「双子の家紋3つだけ…」
ふと手を止めたレオンは、何か閃いたのだろう。墓地へと走って行った。流石レオン様は頭が良く、この短時間で謎を解いたらしい。恐らくは墓地へ双子の家紋3つを探しに行ったのだろう。わたしはレオンの背中を見送った後にそのダイヤル式パズルと向き合った。何回かゲームをやって来たけれど、実は今まで一度もお墓の家紋を確認したことがない。勘と運だけを頼りに適当に、闇雲に、ただひたすら解いていた。勿論今回も、という訳でわたしはそっと目盛りにそっと手を伸ばした。