結局渋々と梯子を登り、高台に立っているわたし。梯子を登る最中、レオンがこちらを見ないか何度も何度も見下ろしたけど、発言の通り見上げることはなかった。なんか寂しい。なに言ってるんだわたし。
「れおーん、着いたよ」
「あぁ。それじゃ俺は先に続いてそうな道を探してくるから名前は此処で待機しててくれ。恐らくそこなら安全だ」
「はぁい」
走り出したレオンを見下ろしながら、わたしはさっき渡されたばかりのショットガンをそっと撫でた。まだ体がレオンに包まれてるような錯覚がして、胸が高鳴る。わたしばっかりドキドキさせられてる気がする。なんかちょっと、悔しい。
(よし…)
兎に角、今は自分に出来ることをしよう。この高台の上から、レオンに危険が及ばないように見守る。幸い、敵は最初にレオンが大量に倒してくれたから残ってはいないだろうけど。
「名前!」
「ん?なにか見つけた?」
「扉を見つけたが、仕掛けを外さないと開かないらしい」
「うんうんっ」
「何か手掛かりがないか探索してくる。名前のところから何か見えるか?」
問いかけられ、わたしは村全体を見渡す。赤い宝箱をふたつ見つけ、指をさして「あっちとこっちに宝箱みたいのが見える!」と2ヶ所教えた。頷いたレオンは指さした方へと走って行く。わたしはその背中を見送りながらぺたんと座り込んだ。あれくらいのアドバイスなら大丈夫だろう、と自分に言い聞かせながらレオンの背中を見送った。
(…この夢は、)
いつ覚めるんだろう?この世界に来てから、少しずつ少しずつ、わたしの心の中で変化が起きている。散々、夢だと思っていたこの世界。今では覚めないで欲しいなんて思っている自分がいる。寧ろ、夢ではなくて。現実であればいいのに、なんて望んでいる。死ぬ危険だってあるのに、どうしてだろう。
(まだ此処にいたい…)
「名前」
名前を呼ばれ、慌てて立ち上がって地面を見下ろすとレオンがこちらを見上げていた。
「何かあった?」
「紋章。これを嵌め込むみたいだ。先に進めそうだから降りて来い」
「もしかしてレオンがお姫様抱っこで受け止めてくれるの?」
「お前には梯子が見えないのか」
「見えますすみません」
渋々梯子を降り、地に足をつけてからレオンに駆け寄る。笑いながら「お留守番ちゃんと出来たよ」なんてふさげてみたら、「ご苦労さん」とレオンが口元を緩めて頭をぽんぽん撫でてくれた。わたしたちは扉へと向かい、小さな穴にレオンが拾ってきた紋章をそっと嵌め込む。ぎぎぎ…と重低音を立てて開かれた扉を潜り、新たな道へと足を踏み入れた。