武器商人と別れたわたしたちは、谷間の村へと続く扉を潜り抜けた。大量の村人たちがわたしたちの存在に気付き、武器を片手にこちらへ向かってくる。レオンは銃を構えたまま、「あの高台に登るぞ」と走り出した。レオンの視線の先を追うと、この谷間の村全体が軽く見渡せそうなくらい、のっぽな高台がひっそり立っていた。そこへと急ぐわたしたちのまわりには、ガナードたちがみるみるうちに集まってくる。まるでわらわらと光に群がる蛾の大群のように。レオンは村人の持っていたダイナマイトを爆破直前で撃ち落とし、上手い具合にガナードたちの群れの辺りで爆破するよう促した。ばたばたと倒れていく彼らの間を割いてわたしたちはようやく高台へとたどり着き、梯子の前で立ち止まる。

「名前は先に登れ」

「え、やだ!」

「……何故だ」

「パンツ見えちゃうもん!」

「名前の下着に興味は無いから安心してくれ」

「即答されるとそれはそれでへこむんですが」

「………お前は俺にどうしてほしいんだ」

ふてくされたわたしの頭を軽く小突きながら、やれやれと言わんばかりにレオンは溜め息を吐いた。それから周辺のガナードがいないことを確認し、アタッシュケースから取り出したショットガンをわたしの手に握らせて。

「これを持ってろ」

「お、重…!てゆかショットガンの…つ、使い方わかんない…。R1おしながら□ボタン…?」

「何意味分からないこと言ってんだ」

思わずゲームの操作方法を口にしてしまって咄嗟に口を噤ぐと、背後からレオンに覆われて身動きが取れなくなってしまった。

「今から教えるから一度で覚えてくれ」

「ち、近いっすレオン氏…」

「言葉で説明するよりいいだろうに」

「いい匂いクンクン」

「黙れ変態」

背中にぴったりとくっつくレオンの体、耳元で囁かれる低音ボイス。ああなんて幸せ、…じゃなくて。覚えなきゃ。レオンは丁寧にショットガンの構え方や銃弾のリロードの仕方、定め方や撃ち方を教えてくれた。完璧に狙いを定めて撃つことは勿論まだまだ出来ないけど、これならガナード相手にレオンの足を引っ張らずに、自分の身を守るくらいのことなら出来そう。

「このショットガンはさっき商人がチューニングしてくれたからな。初心者でも使えるよう改造もしてもらったから、名前でもガナード1人はすぐ倒せる筈だ」

「ふむふむ!ありがとう」

「試しにあれ撃ってみるか?」

そう言ってレオンが指さしたのは古びた赤いドラム缶。わたしはショットガンを構え、ポケットいっぱいに詰め込んだ弾でリロードし、狙いを定めて射撃。勿論ぶれた。けれど多少かすりはしたらしく、凄まじい爆発音を立ててドラム缶が炎を上げた。わたしはショットガンを下ろし、安堵の息を零す。

「ほう」

「あたったぁ…」

「名前は案外のみ込みが早いな」

「それはきっとレオンの教え方がいいからだよ」

「当然だ」

「認めた…だと」
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