「毎回思っていたんだが」

それはいつも通りの夕食の時間。わたしたちは毎日、2人で交代をしながら炊事当番をしていた。ちなみに今日はわたしの番。レオンは口に含んだスクランブルエッグを胃の中に全て収め終えてから、眉間にしわを寄せた。

「お前は本当に料理が出来ないんだな」

「出来てるよっ」

ほら!と自分の皿に散りばめられたスクランブルエッグをずいと見せ付ける。レオンが若干鼻で笑っているような気もするけれどそこら辺は相変わらずかっこいいので許そう。

「今日の作品名は」

「スクランブルエッグ」

「…一昨日」

「半熟スクランブルエッグ」

「……その前」

「グリーンハーブも混ぜ混ぜしたスクランブルエッグ」

「おいハーブ泥棒の犯人はお前だったのか」

「ごめんて、でもバリエーションが豊富になっていいじゃないか!」

「まぁ今のところ全て同じメニューだけどな」

「同じじゃないよ!マンネリ化しないように毎回思考を凝らして創意工夫を」

「既にマンネリ化してる場合どうしたらいいんだ」

もともと家でも学校の調理実習でも食べる専門だったわたしが、突然料理を出来るはずもなく。手に入れられる食材も限られているから、毎回スクランブルエッグになってしまう訳で。それでもレオンはなんだかんだブーブー言いつつも残すことなくたいらげてくれるのだ。

しかもレオンに料理を作らせるとクオリティが高く素晴らしいのでこちらからはケチが付けられない。何がって、勿論腕もだけどレパートリーも豊富。決してお洒落とかそういう部類ではないし食材も食材なのでかなり質素だけど、お腹にたまるしスタミナはつくし美味しいしで言うことが無い。本当にこの人は非の打ち所が無いなあと実感する。

「スクランブルエッグとか言ってるけど実際はただ分裂した卵焼きだろ」

「ちょ!失礼な!」

「まぁ不味くはないがな」

「……えへ」

アメとムチってこういうことなのだろう、膨らんでいた頬がいっきに緩むこの単純さ。まんまと引っかかったわたしの今の心境は”これからも彼のために美味しい美味しいスクランブルエッグを作ってあげる”という野望に満ちている。今決めた。そしていつしか、他の女の子が作ったものなんて口に合わないくらい、わたしの卵料理しか食べられない口にしてやるんだ!










to egg
(ひみつの野望)
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