「そう言えば」
「ん?」
「ジャケットが無い」
「さっきの人たちが持ってったのかなあ」
「…さぁな」
そっとわたしを解放し、無線の通信機を取り出すレオン。連絡が遅くなったことを謝罪したり、ルイスからの情報で教会にアシュリーがいると報告している。そしてわたしに渡った無線通信機を耳にあて「もしもし」と小さな声で囁けば。
『名前?』
「はにがーん!!」
『どうしたの、…レオンに何かされたのかしら』
「うん、レオンにセクハラされたの」
「なっ…!?」
『あらやだ』
「うそうそ!さっきいたルイスって男のひとにされたの!」
『なんだ、つまらない』
「ふはっ」
「おいハニガン」
『まぁ、2人とも気を付けてね。特に名前はセクハラに』
「はーい!」
「………。名前?」
「ごめんなさーいっ」
舌を小さく出しながら頭を下げ、通信機を渡せばお返しに小さな溜め息が返ってきた。そしてすぐ、頭に軽いげんこつが落っこちてくる。
「次にふざけたら…」
「ふざけませんすみませんごめんなさいいい」
「……村に戻るか」
「はーい」
わたしたちがその建物から出ようとすると、窓からは商人がひょっこりと顔を出してわたしたちに手招きをした。不振そうに銃を構え近付いて行くレオンには、「悪い人では無さそうだよ?」と笑ってみた。まあ確かにわたしも初見プレイのときには随分と吃驚させられたけどね!やってる内にいつしか青い光が安心と癒しの光に見えるものなんですよレオンさん。
「いい武器がある」
武器商人は、少し薄汚れたような青いコートを広げ、不気味に笑った。まるでその行為は露出狂にも見え…あ、武器商人と目が合ってしまった変なこと考えてごめんなさい。とか思っていたら商人が近付いてきたではありませんか。焦るわたし。なんだか変な汗も出てきたぞおよよ。心の中読まれたかなあ、なんてわざと視線をふわふわ宙へと泳がせる。気が付くと腕を掴まれていたので、思わず怖くなってぎゅっと目を瞑った。その後すぐにレオンと商人の会話が聞こえてきたので恐る恐る瞳を開けると、わたしの手首にはいつの間にか包帯が巻かれていた。
「え、商人さん…これ…」
「サービスだぜ」
うっひっひと笑う武器商人にわたしはたくさんのありがとうを告げ、レオンの後を追ってその場から離れた。商人があまりにいい人過ぎて涙が出そう。
「やっぱりいい人だったでしょ?」
「そうだな」
「レオンはなに買ったの?」
「ライフル」
「ほうほう」
そう言えば、アタッシュケースもひとまわり大きくなってるような気がする。満足げにライフルをしまうレオンの姿を見て、わたしは小さく笑った。