たけし城と慣れ親しまれているクローゼットから転がり出てきたのはハンサムなプーことルイス。レオンにルイス、これほどの美男ふたりを一度に見れるなんてわたしも役得役得。二言三言会話を交わした後、ずしんずしんと近付いてくる重い足音にルイスは振り返り「ヤバイ」と声を漏らした。
「此処のボスだ!」
「何だと」
先頭に立ち、武器を構える2人のガナード。その背後には威圧感たっぷりのつるっぱげ…否、一際巨大な村長様が現れていらっしゃった。もじゃもじゃな髭と少し赤を帯びた瞳がなんとも不気味で背筋が凍る。危険を察知したレオンはすかさず村長の腹部へと蹴りをお見舞いしようとするも、片手で食い止められ突き飛ばされてしまった。
「レオン…!」
駆け寄って体を揺さぶるけれど、気絶したレオンが返事してくれる訳もない。そうこうしている内に、隣にいたルイスは首を掴まれ持ち上げられている。苦しそうに顔を歪ませ、もがくルイスの表情に血の気が引いた。
(やばい)
解かせるように村長の腕へ必死にしがみついてみたもののすぐに腕を払われ、壁と思い切り衝突。ぼやけて行く視界、遠退いて行くルイスの声、わたしはそのまま意識を手放した――
これで夢も
覚めちゃうのかな
『弱き人間よ…
我らの力を授けてやろう
やがてお前もこの力の魅力に逆らえなくなる…』
――朦朧とした意識の中で、そんな声が聞こえた。
後から鋭利な針がぷすりと首筋に刺さる感触、何かを注入され体内に侵入してくる気持ち悪さ、妙にリアルに伝わる。夢と現実の硲にいるような、不思議な感覚。瞼を開いたら、目に映る世界はどうなっているだろう?―――
「名前!」
名前を呼ばれ、はっと我に返れば背にはレオンとルイス。皆、両腕の手首には頑丈な手錠のようなもので繋がれている。もがいてみるも、うんともすんとも言わない。すると後ろからはくす、と小さな笑い声が聞こえた。
「無理だよお嬢ちゃん、俺ら男2人の力でもコレは取れなかった」
「お前がプーだからな」
「おいレオンひでェぞ」
「…なんか2人とも仲良くなってない?」
「「なってない」」
「あ、そう?」
手首と首筋の痛みは消えないけれど、2人の息のぴったり合った会話には思わず場違いながら顔が綻んだ。ち、と舌打ちするレオンに何で舌打ちしてんだよと絡むルイス。…うん、やっぱりすごく仲いいと思うんだけど。