一先ずハニガンと無線を繋げたらしいレオンは、同行していた警察の死と異常な村の様子を詳しく報告している。わたしは拾った弾の箱などをレオンの懐に勝手に詰め込みながら、ハニガンとちょっと喋ってみたいなあなんて気持ちを込めて見上げてみた。丁度レオンと視線が合えば、察してくれたのか無線通信の機械をわたしに差し出してくれたのでドキドキしながらそれを受け取った。
「も、もしもし」
『貴女が噂の名前ね』
「は、はい!はわわわわ」
『あら可愛い反応』
「めめめ滅相もないいい」
『ふふ。あ、レオンに北側のルートから村を抜けられる、と伝えて頂戴』
「い、いえすハニガンさん」
『ハニガンでいいわよ』
「ハニ…ガン!」
『これはレオンも気に入るわけね』
「へ?」
『いいえ何でも無い。それじゃ、無事を祈っているわ』
通信の切れた機械をレオンに渡し、ありがとうと伝えた。久し振りにレオン以外に人の声を聞けてほんの少し嬉しかったり。(ガナードを人とは認めてないからね!)しかもハニガンは美人だし、美声だし、目や耳の保養になった。これからもレオンが連絡してるとき、少しだけ変わってもらうことにしよう。こうして、わたしのちょっとした楽しみが増えた。無論、勝手に。
「あ、レオン。北側のルートを進めば村を抜けられるらしいよ」
「北側か」
レオンが地図を広げ、わたしも隣から覗き込む。ゲームではご丁寧に目的地やセーブポイントには記しがあったのに、こっちは無い。本当にただの地図。当たり前だけども。うわあ、もしわたしがこんな状況に置かれたら即行積んでるだろうなあ。なんてことを考えていたからか、知らない間に顔を歪めていたらしく、どうした?と尋ねられた。なんでもないと慌てて首を横に振り、わたしたちは気を取り直して北側へ進む。
「こけこっこがいる!」
「鶏か」
レオンが小屋に入りタイプライターを打ったり敵を倒している間に、わたしは柵を越えて鶏と追いかけっこをした。時折、落ちている卵をいくつか拾いながら鶏や犬や牛と思うがままに戯れる。すばらしき自然。すると歩いていた先に金色の光、駆け寄ると―
「きんたま!!!」
「!?」
「レオン、きんたまだよ!」
驚いて小屋の2階の窓から顔を出したレオンに、拾いたてほやほやの金の卵を見せた。呆れたように「あまり連呼するな」と苦笑するレオン。ごめんて、つい。敵を倒し終えたレオンとようやく合流すれば、拾った卵やアイテムををレオンに手渡しながら青く錆びた門をくぐり抜けた。