駆け込んだ空き家の扉をわたしが急いで閉めると、レオンが近くにあったタンスの様な木製家具で入り口を塞いだ。我ながらナイスコンビネーション、と心の中でこっそり自分を褒めてあげたり。外からは村人たちの叫び声と、電動チェーンソーがフル回転する音が聴こえる。ブラウン管越しに感じた恐怖とは違う、現場はやっぱり怖いっす。震える両手を、レオンには見えないようそっと後ろに隠した。

「どうした」

「なんでもないっ」

刹那、2階からは窓ガラスが割れる音。恐らくはガナードたちが梯子を2階に繋げたのだろう。レオンは驚いたように階段の先を見上げ、木の板で打ち付けられている脆い窓から彼らの姿が垣間見えれば「上だ」とだけ告げ階段を駆け上がって行った。わたしも慌てて後を追う。

「レオン、ショットガン!」

「あぁ」

どうぞ取って行って下さいと言わんばかりに、堂々と壁に立てかけられていたショットガンをレオンに手渡した。割れた窓や梯子から続々と入ってくるガナードたちをレオンが倒してる間にわたしは手榴弾やら銃弾の箱やらを回収。そして厄介なコレ、―

「おりゃあああ!ていっ」

敵の侵入の原因であった梯子を思い切り押し倒した。よじ登ってきていたガナードや、周辺にいたガナードたちが呻き声を上げながら倒れて行った。ふう。謎の爽快感。

「名前こっちだ」

レオンに指で手招きされ、窓から飛び出て屋根に降りた。彼の元へと駆け寄り、背中に隠れながら辺りの様子を見渡す。大量の村人、というよりは寧ろ続々と増えている。

(そだ、いいこと思いついた)

レオンからほんの少し離れ、「みんな、こっちだよ!」なんて大声を出して村人たちの気をわたしに向けさせた。

「何してる!」

「いいからレオンはジェイソンさんとの戦いに集中して!後はわたしに任せて!」

「ジェイソンさん?」

「その…おっきいチェーンソーもってる人!」

「何のジョークだ」

「ジャパニーズジョーク!」

「じゃ、任せた。死ぬなよ」

そう言いながらジェイソンさんと1対1で戦うレオンを視界の端にやり、わらわらと集まってくる村人たちを軽く睨んだ。

「これで全員?いっくよー」

に、と笑いながらまとまった村人の集団の元へ手榴弾をひとつ放り投げた。両手で耳を塞ぎ、全滅したことを確認してから小さくガッツポーズ。手榴弾の使い方結局教わってないけど、まぁいいや百聞は一見にしかず!否、実践に、かな。

「名前!」

「レオ…」

呼ばれて振り向いた瞬間、視界に映ったのはレオンではなくガナード。いつの間にか近距離まで迫っていたらしく、わたしは驚いてしまい身動き取れずその場で固まってしまった。逃げなきゃと分かっていても体が動かない。

「名前しゃがめ!」

レオンの声を捉え、直ぐしゃがんだ―と言うよりは恐怖ですくんで足の力が抜けたと言うか。何はともあれ、しゃがんだことに違いはない。すると自分の真上を越えて地面へ落ちて行くガナードの体。どうやらジェイソンさんとの戦闘にケリをつけたレオンが駆け付け、間一髪で蹴り飛ばしてくれたらしい。流石すぎる。怖すぎる。かっこよすぎる。大好きすぎる。溢れ出る色んな気持ちを堪えきれず、レオンに抱き付いてしまった。けれど突き放されることなく、優しく抱き止められてしまったから更に甘えてしまいそうになる。がまんがまん。

「大丈夫か」

「うん…ありがとうレオン」

「いや名前こそよくやった。敵を引きつけて手榴弾、か。いい作戦だ、お陰で助かったぞ」

「えへへ」

「だが、まだいるらしいな」

ふと地面を見るとわらわらとガナードたちが集まって来ていた。レオンが溜め息混じりに「まるでゴキブリだな」と呟いた瞬間、何処からともなく鐘の音。村人たちはその場で武器を落とし、列を為しながら教会へと入って行く。何も無かったかのようにしんと静まり返ってゆく村の中心で、レオンはわたしを抱えたまま屋根から飛び降りた。それからわたしを解放し、眉間にしわを寄せて小さく呟く。

「どうなってる?」
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